研究課題/領域番号 |
21K18591
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 孝彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20241565)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 導電性有機高分子 / 電子輸送 |
研究実績の概要 |
本研究では,導電性有機高分子材料に対して,物性物理学的視点から電気伝導機構の解明を試み,更なる高電気伝導化への指針獲得を目指している.本年度は,研究協力者として参画している奥崎秀典教授(山梨大学),東ソー(株)が新たに開発した自己ドープ型導電性高分子材料S-PEDOTについて,基本的な電気伝導特性を明らかにするために各種の成膜手法,成膜条件による導電性膜の作製及びその評価を重点的に行った. S-PEDOTは,これまでに多くの研究が行なわれてきたPEDOT:PSSとは異なり,自己ドープに寄り伝導キャリアを生成し,また成膜後の後処理などの高電気伝導化するためのプロセスが必要無いなどの特質や利点がある.しかし,新しい材料であるため,基本となるキャリア輸送機構についての情報集積・物理機構理解が進んでいない.本年度,S-PEDOTの電気抵抗の温度依存性を,高分子重合度や成膜条件が異なる複数の試料を用いて測定し,いくつかの電気伝導機構モデルを適用した解析を行った.その結果,PEDOT:PSSの場合は,高電気伝導化が成膜後の処理により進むにつれて,電気伝導機構もホッピング伝導(可変領域型)から乱れた金属(弱局在)に変化していくのに対して,S-PEDOTの場合は,膜作製条件などにより高電気伝導化した試料においてもホッピング伝導を維持したまま局在長が長くなっていく振る舞いが観測された.このことは同程度の高電気伝導性を有するPEDOT:PSSとS-PEDOTにおいて,電気伝導機構が異なることを示している.また,成膜条件などの改良により結晶化度上げることで,さらに高電気伝導性を得るための金属的伝導性を得ることが可能であることを示唆している.来年度以降に成膜方法の改良と微視的キャリア情報取得のための赤外反射分光測定を計画している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい導電性有機高分子材料S-PEDOTについて共同研究を新たに実施することで,当初計画におけるPEDOT:PSSのみの研究から両者の比較研究が行なえるようになった.このため異なるキャリアドープ機構を相互比較できるようになり電気伝導機構モデルを検討するうえでの重要な進展となった.
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今後の研究の推進方策 |
典型的導電性高分子材料PEDOT:PSSの成膜方法・条件の探索による高電気伝導化と伝導機構解明と並行して,新規自己ドープ型導電性高分子材料S-PEDOTの伝導機構解明を進める.両者の構造特性や伝導特性の相違点と類似性を見極めることで,高分子材料系の伝導機構解明を進める.応用材料として必要とされる更なる高電気伝導化に向けた物性物理視点のアプローチを可能とする詳細な電子状態解明に向けて,電気伝導性に加えて赤外物性,微視的構造計測を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において研究成果の発表として応用物理学会での対面講演発表や放射光施設での出張実験,共同研究者との打合せ出張などを予定していたが,新型コロナ感染拡大防止のために学会発表や打合せはオンラインで行うことになり,また出張実験については延期となった.このため当初計画で計上していた国内出張旅費に相当する部分が次年度使用となった.2022年度は,状況が好転することが期待でき延期となった出張実験や対面発表等を次年度分も合わせて行うことで研究を進展させる.
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