研究課題/領域番号 |
21K18596
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳澤 実穂 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50555802)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 神経 / 高分子液晶 / 偏光 |
研究実績の概要 |
神経細胞の中央にあるニューロンフィラメントは配向した棒状高分子の束であり、それを覆う多層の脂質膜構造は強誘電性の高分子液晶と類似する。神経伝達する波を膜伝搬するソリトン波とするニューロン表面波仮説も、神経細胞全体が液晶であれば説明がつく。このように神経細胞が高分子液晶であることを示唆する報告は数多くあるのに対し、実証研究はほぼない。そこで本研究では、神経細胞へ電場印可し、光学特性や電気特性の解析から高分子液晶であるかを問うことを目的としている。 本年度は、ヤリイカやスルメイカを解剖して神経軸索を採取し、それを偏光顕微鏡下で観察することにより、神経軸索に沿った光学異方性を調べた。その結果、神経軸索に沿って大きく2つに分けられる層構造を持つこと、その光学特性は場所により異なることが分かった。さらに、この光学特性を生みだす生体高分子を特定するため、マイクロキャピラリーにより分子の採取を試みた。解析途中であるものの、2層それぞれの部分に局在する分子の特定が可能となる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生きたイカを手に入れるためルート確立と、電気測定に要する機器パーツの入荷のめどが立たず遅れが生じた。一方、生イカを用いて偏光顕微鏡下での光学特性を解析すること、その手法は確立できたことから、遅れはあるものの順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、2021年度に偏光顕微鏡から得られた神経軸索の光学特性が、(i)どのような生体高分子により生じているのかを生物学的に調べること、(ii)電場印可して得られる電気特性と光学特性がどのような相関で時空間変化するのかを、電気測定と高速度カメラ下での画像解析から調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
生きたイカを手に入れるためルートの確立に時間を要した点、購入予定であった機器パーツが半導体不足の問題により入荷できなった点から、執行が遅れた。しかし、生イカは購入できる目途がたったこと、測定機器については別のパーツを購入予定であることから、問題はほぼ解決された。さらに、コロナ禍でオンライン化していた学会が対面実施される予定である。そこで、次年度はイカを含むサンプルや試薬、機器パーツの購入費として約200万、学会に現地参加して情報収集するための旅費として約50万、論文印刷費などの経費として約50万を支出予定である。
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