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2021 年度 実施状況報告書

『無機ソフトマター』における格子ダイナミクスの物理パラメータ測定

研究課題

研究課題/領域番号 21K18599
研究機関名古屋大学

研究代表者

片山 尚幸  名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50623758)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2023-03-31
キーワード量体化 / 短距離秩序 / ダイナミクス / 局所構造解析 / 放射光X線
研究実績の概要

二次元三角格子系LiVS2では、構成元素のバナジウムが配向の異なるジグザグ鎖の短距離秩序が自発的に形成され、これが時間・空間的に揺らいで現れる。これは、ソフトマターの一種、柔粘性結晶に分類される状態であり、近年研究が盛んに行われる『量子液晶』の格子版といえる新奇な状態である。本研究ではLiVS2の無機ソフトマター状態を規定する物理パラメータをX線吸収分光法を活用した独自アイデアに基づく時分割測定により求め、無機ソフトマター発現のメカニズムを探ることを目的としている。
課題の採択時期と放射光施設の申請時期の兼ね合いのため、2021年度後期には放射光施設で目的とするX線吸収分光法を活用した実験を行うことができなかった。そのため、実験を2022年度に集中的に行うことを念頭に、2021年度後期は実験に用いる単結晶試料の純良化に注力した。合成した単結晶試料は空気中不安定であることから、二重のキャピラリで試料を保護し、中にアルゴンガスを充てんさせたオリジナルな試料準備法を考案し、SPring-8 BL02B2での単結晶X線回折実験やBL43LXUでの非弾性X線散乱実験を通じて試料のクオリティのチェックを行った。いずれの実験でも相転移温度となる314 Kで明確なスペクトルの変化が確認され、純良単結晶の育成に成功していることが判明した。
X線吸収分光法はSPring-8のBL36XUで実施することを計画しており、2022A期のマシンタイムを確保している。また、実験に向けてビームライン担当者と打ち合わせを重ねており、実験実施に必要なヒーターの購入も完了している。以上のように、2021年度には目的とするX線吸収分光法は行えていないが、2022年度における実験実施のために必要な準備を入念に行うことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SPring-8の課題申請時期と本課題の採択時期の兼ね合いのため、2021年度には放射光施設で実験を実施することはできなかった。ただし、2021年度後期を有効に使い、設備の確保や試料・装置の準備を入念に行うことができたため、2022年度に万全の準備で実験に臨む態勢を整えることができた。

今後の研究の推進方策

SPring-8のBL36XUでマシンタイムを確保しており、ナノビームを用いた時分割X線吸収分光測定を行う。ジャパンハイテック株式会社製の加熱ステージリンカムを本研究課題の予算で購入してあり、この加熱ステージ上に試料を設置して実験を行う。本ステージを用いたX線吸収分光測定はあいちSRのBL11S2ビームラインで複数回実施している実績がある。ビームライン担当者とも複数回の打ち合わせを重ねており、実験実施に向けて順調に準備できている。当初計画について、変更の必要等は生じていない。

次年度使用額が生じた理由

ジャパンハイテック製リンカムの購入が2022年度にずれ込んだため、2021年度交付額の一部を持ち越しし、2022年度経費と合算して購入に充てる必要が生じた。これによる研究計画への支障は生じない。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of Virginia(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Virginia
  • [雑誌論文] Charge-ordered state satisfying the Anderson condition in <mml:math xmlns:mml="http://www.w3.org/1998/Math/MathML"><mml:msub><mml:mi mathvariant="normal">LiRh</mml:mi><mml:mn>2</mml:mn></mml:msub><mml:msub><mml:mi mathvariant="normal">O</mml:mi><mml:mn>4</mml:mn></mml:msub></mml:math> arising from local dimer order2022

    • 著者名/発表者名
      Shiomi M.、Kojima K.、Katayama N.、Maeda S.、Schneeloch J. A.、Yamamoto S.、Sugimoto K.、Ohta Y.、Louca D.、Okamoto Y.、Sawa H.
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 105 ページ: 1-5

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.105.L041103

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 混合原子価スピネル酸化物LiRh2O4における構造物性研究2021

    • 著者名/発表者名
      塩見学, 小島慶太, 片山尚幸, 前田秦, J.A.Schneeloch, D.Louca, 岡本佳比古, 澤博
    • 学会等名
      第10回 名古屋大学シンクロトロン光センターシンポジウム
  • [学会発表] 超伝導スピネル化合物CuRh2S4における圧力誘起構造相転移2021

    • 著者名/発表者名
      塩見学, 小島慶太, 平尾直久, 片山尚幸, 澤博
    • 学会等名
      第77回日本物理学会
  • [学会発表] 層状LiVSe2の高圧下で発達するジグザグ鎖秩序2021

    • 著者名/発表者名
      小島慶太、磯田龍也、塩見学、片山尚幸、澤博
    • 学会等名
      日本物理学会 2021年秋季大会
  • [学会発表] 層状LiVO2におけるLiイオンサイトの乱れに起因する三量体ガラス状態の局所的結晶化2021

    • 著者名/発表者名
      小島慶太、松田悠大、塩見学、片山尚幸、澤博
    • 学会等名
      日本物理学会 第77回年次大会
  • [学会発表] 動的短距離秩序を有すLiVS2の放射光X線構造研究2021

    • 著者名/発表者名
      小島慶太、片山尚幸、田渕雅夫、澤博
    • 学会等名
      第10回 名古屋大学シンクロトロン光センターシンポジウム
  • [学会発表] 放射光X線回折による直線型三量体をもつTaTe2の局所構造解析2021

    • 著者名/発表者名
      松田悠大、小島慶太、片山尚幸、澤博
    • 学会等名
      第77回日本物理学会
  • [学会発表] 放射光X線非弾性散乱を用いたFeV2O4の低温相におけるフォノン分散の観測2021

    • 著者名/発表者名
      萬條太駿、鬼頭俊介、片山尚幸、中村真一、勝藤拓郎、新居陽一、有馬孝尚、長谷川巧、石川大介、Alfred Q. R. Baron、澤博
    • 学会等名
      日本物理学会 2021年秋季大会
  • [学会発表] 新しい超伝導体を求めて2021

    • 著者名/発表者名
      片山尚幸
    • 学会等名
      日本物理学会名古屋支部 公開講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 幾何学的フラストレーション系物質における量体化と短距離秩序の発達2021

    • 著者名/発表者名
      片山尚幸
    • 学会等名
      ISSP ワークショップ 高圧セミナー “最近の話題から”
    • 招待講演
  • [備考]

    • URL

      http://www.mcr.nuap.nagoya-u.ac.jp/profile_katayama.html?msclkid=f9dfc869c9b711eca334f6793af3fd08

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公開日: 2022-12-28  

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