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2021 年度 実施状況報告書

金属ナノ粒子における量子サイズ効果の理解とその物性応用

研究課題

研究課題/領域番号 21K18600
研究機関京都大学

研究代表者

石田 憲二  京都大学, 理学研究科, 教授 (90243196)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワードナノ粒子 / 量子サイズ効果 / 核磁気共鳴
研究実績の概要

本研究では、サイズが制御された金属ナノ粒子や、複数元素からなるナノ粒子に対し核磁気共鳴(NMR)測定を用い、金属ナノ粒子特有な現象を発見しその物性理解に努める。特に最近我々が白金(Pt)ナノ粒子に対して見出した、核スピン-格子緩和率(1/T1)に見られる「量子サイズ効果」が他の金属ナノ粒子にも見られるのか明らかにし、物性応用につなげる。
Ptは強磁性状態に近い金属として知られ、フェルミエネルギーにはPt-5d電子が支配的である。我々はPtナノ粒子で見られた量子サイズ効果へのd電子の寄与や元素置換の効果を調べるために、同族のフェルミエネルギーに4d電子の寄与を持つパラジウム(Pd)を混ぜたナノ粒子や、比較として、フェルミエネルギーにd電子の寄与を持たないCuを混ぜたPt1-xCuxナノ粒子で研究を行った。
① Pt1-xPdxナノ粒子における1/T1の量子サイズ効果の保持
Pt1-xPdxナノ粒子におけるPt-NMRの結果は混合比によらずPtだけからなるナノ粒子と同様な量子サイズ効果が観測された。この結果は性質の似た元素からなるナノ粒子では、異なる元素による不純物効果は無視できるものと考えられる。
② Pt1-xCuxナノ粒子における1/T1の量子サイズ効果の抑制、および同一ナノ粒子内における電子状態の一様性。
粒径がほぼ同じ(3nm)Pt1-xCuxナノ粒子に対してPtとCuのNMRを行い、そのぞれの元素における電子状態を1/T1より調べた。驚くことに、PtとCuとで1/T1は同じ振舞いが見られ、似たような電子状態になっていることがわかった。さらにCuの濃度を増やしていくと、1/T1の異常の温度は変わらないものの、1/T1のピークの振舞いは大きく抑制された。この結果はPt1-xPdxと対照的であり、Ptナノ粒子に見られた低温の1/T1の異常はd電子に由来していることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、サイズが制御された金属ナノ粒子や複数元素からなるナノ粒子に対し核磁気共鳴(NMR)測定を用い、金属ナノ粒子特有な現象を発見しその物性理解に努める。特に最近我々が白金(Pt)ナノ粒子に対して見出した、核スピン-格子緩和率(1/T1)に見られる「量子サイズ効果」が他の金属ナノ粒子にも見られるのか明らかにし、物性応用につなげる。昨年度、Pt1-xPdxやPt1-xCuxナノ粒子のNMR測定より、Ptナノ粒子に見られた「量子サイズ効果」がPtのd電子に由来していることを明らかすることが出来た。今後この異常を制御する方法やs電子が伝導に重要な役割を果たしている金属ナノ粒子についても調べていく。

今後の研究の推進方策

今後、さらにPtナノ粒子で見られた「量子サイズ効果」を理解しその制御のために以下の研究を計画している。
① Pt1-xNixナノ粒子による磁性の発生
我々のpreliminaryなNMR測定から、Ptに同族のNi混ぜたPt1-xNixナノ粒子では磁性が現れることがわかった。具体的にどのNi濃度から磁気的な振舞いが見られるのか、NMRや磁化測定から調べる。ナノ粒子の磁性はよくわかっていない点も多く、またナノ粒子磁性に関するのNMRの研究も皆無である。Pt1-xNixナノ粒子のx依存性や粒径依存性を調べ、磁気転移温度や磁性の性質を調べる。また量子臨界現象が見られるかどうか調べる。
② d電子を含まないAuCuナノ粒子のNMR測定
ナノ粒子の研究では単純金属であるCuナノ粒子の研究が1960年代よりおこなわれてきた。ナノ粒子の被膜としてPVPを用いる合成法では、Cu単体のナノ粒子生成は難しいが、同じd電子を含まないAuとのナノ粒子Au1-xCuxは生成可能である。d電子を含まないナノ粒子の1/T1の測定を行い、Ptで見られた「量子サイズ効果」がs電子金属ナノ粒子に対しても観測されるのかを調べる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] Pt-Cuナノ粒子のNMRによる研究2021

    • 著者名/発表者名
      木下雄大, 奥野友則, 北川俊作, 石田憲二, 草田康平, 北川宏
    • 学会等名
      日本物理学会2021年秋季大会
  • [図書] Quantum Size Effect Probed by NMR Measurements2021

    • 著者名/発表者名
      Tomonori Okuno, Shunsaku Kitagawa, Kenji Ishida, Kohei Kusada, and Hiroshi Kitagawa
    • 総ページ数
      17
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-981-16-4456-6

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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