研究課題/領域番号 |
21K18613
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金子 俊郎 東北大学, 工学研究科, 教授 (30312599)
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研究分担者 |
佐々木 渉太 東北大学, 工学研究科, 助教 (90823526)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 気液界面プラズマ / テスラ級強磁場 / プラズマ選択輸送 / 液相中ラジカル / 細胞機能制御 |
研究実績の概要 |
本研究では,強磁場MRI装置により腫瘍細胞をリアルタイムに観察しながら高効率でプラズマ薬剤導入治療を行える装置を開発すべく,テスラ級強磁場中でのプラズマ照射による細胞膜輸送促進(薬剤導入効率向上)の機序解明とその新規細胞機能制御法の確立に挑戦する.具体的には,①強磁場中のプラズマ照射溶液合成装置の製作とプラズマ挙動解明,②強磁場中のプラズマ生成荷電粒子の輸送特性と液相中生成活性種の解析,③強磁場中のプラズマ照射溶液による細胞機能への作用機序の解明,を3年間で実施する.初年度である2021年度は,液中ラジカル(短寿命活性種)を高密度で生成できるプラズマ照射溶液合成装置を製作し,テスラ級強磁場を印加した環境下でのプラズマ挙動を調べる準備を整えた. 1.現有の超電導マグネット(最大磁場強度:4テスラ,ボア径:400mm)の内部に設置可能な「プラズマ照射溶液合成装置」を設計・製作した.また,東北大学金属材料研究所強磁場超伝導材料研究センターの超電導マグネット(最大磁場強度:10テスラ,ボア径:100mm)専用の装置設計も開始した. 2.プラズマは,石英管内にヘリウムおよび窒素を流しながら,石英管の外側に貼られた円筒状高電圧電極に低周波高電圧を印加することで生成し,中心軸を流れる高速液柱流に照射した.プラズマの放電特性は,高電圧電極の電流-電圧特性とプラズマ発光分光により解析した. 3.まずは,磁場を印加しない状態で溶液中の短寿命活性種の測定を行った.中心軸平行方向に位置制御された試薬注入口から短寿命活性種(OHラジカルおよび亜硝酸前駆体)と反応し蛍光物質を生成する試薬を注入し,その蛍光強度からそれぞれの寿命(半減期)が数100μsecおよび数msecであることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超電導マグネットの内部に設置可能な「プラズマ照射溶液合成装置」を設計・製作し,まずは磁場を印加しない状態で,プラズマを照射した溶液中の短寿命活性種の測定を実施し,OHラジカルおよび亜硝酸前駆体の寿命(半減期)が数100μsecおよび数msecであることを明らかにしている. これらの成果により,2年目に予定しているテスラ級の強磁場を印加することによる短寿命活性種の寿命の変化を測定できる環境が整ったため,おおむね順調であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2年目である2022年度は,②強磁場中のプラズマ生成荷電粒子の輸送特性と液相中生成活性種の解析を実施すべく,以下の研究を推進する. 1. 中心軸の高速液柱流に輸送される荷電粒子は,磁場強度の増大によって還元作用を有する電子から酸化作用を有するイオンに変化していくと考えられるため,イオン照射により溶液表面でラジカルを含む短寿命活性種が多量に生成されることを観測する. 2. 中心軸平行方向に位置制御された試薬注入口から短寿命活性種であるOHラジカルおよび亜硝酸前駆体と反応し蛍光物質を生成する試薬を注入し,その蛍光強度から活性種濃度や活性種分布を推定する. 3. 溶液中のラジカルが関与する反応速度が0.3テスラ以上で遅くなる結果が報告されていることから,強磁場印加によりラジカルに起因する短寿命活性種をより長い時間溶液中に保持できるかどうかについて注目する.特に,OHラジカルに着目し,印加する磁場強度に対する依存性に差異が生じるかどうかについて詳細に調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
半導体部品不足の影響により,予定していた高電圧電源装置の納入見込みが立たず,次年度使用額が生じた.一方で,当初計画していなかった超電導マグネット(ボア径:100 mm)での実験を予定しており,そのサイズに合わせたプラズマ照射溶液合成装置をもう1台製作する必要が生じている.この製作に当該予算を使用する予定である.
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