研究課題
非平衡プラズマを用いてCO2を振動励起することで,触媒上で炭酸塩またはフォルメートを生成する速度が速くなることを前年度の研究で明らかにした。一方,中間体をメタノールに転換するためには,中間体のメタン化反応を抑制してメタノール選択率を高める必要がある。そこで,多様な元素と合金化できるNi合金触媒(NiM/Al2O3: M = Zn,Ga,In)を開発し,CO2転換に対するNiの高活性を維持しながらメタノールの高速合成を実現する高活性合金触媒のスクリーニングを行った。非平衡プラズマは,昨年度と同様にオゾン合成で実績が豊富な誘電体バリア放電を用いた。Ni合金触媒(粉体)はペレットに加工して固定床反応器に供した。固定床反応器の中心にはステンレス製の高電圧電極を設けてあり,高電圧電源のON-OFF制御により,熱反応とプラズマ反応を切り替えて反応性の違いを評価した。NiZnでは低温におけるCO2活性化が向上し約100℃の低温度化を実証した。生成物はCOとCH4でプラズマによってCH4選択性が向上することを確認した。プラズマは反応活性を高めるだけでなく反応選択性を制御する機能を有することを実証した。一方,NiZnではメタノールは生成されなかった。これに対し,NiGaではCO2転換率に対する低温活性化だけでなくプラズマによって低温でメタノール選択率が上昇し約30%に達することに成功した。Ni系触媒はC-H結合の形成を促進するが,合金元素を添加することでC-O結合の生成機能を発現することを実証した。廉価で豊富なNiを基盤としつつ,合金化によってC-C結合の形成制御にも展開できることを示唆しており,電子駆動触媒科学に関する新しい学術を開拓するだけでなく,CO2からジェット燃料合成など幅広い応用展開の道筋が示され,本研究提案の基本概念となるプラズマ触媒科学の重要性と意義が実証された。
野崎智洋:著作賞(静電気学会)受賞(2022年9月)
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