研究課題/領域番号 |
21K18618
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
比村 治彦 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (30311632)
|
研究分担者 |
三瓶 明希夫 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 准教授 (90379066)
神吉 隆司 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), 国際海洋政策研究センター, 教授 (40524468)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
キーワード | プラズマナノプロセス / 反応性イオン / リモートプラズマ |
研究実績の概要 |
既存の反応性プラズマを用いたプラズマCVD/ALDでは、プラズマ中に含まれる反応性ラジカル、イオン、電子、中性粒子の全粒子種がターゲットと化学的に、一部は物理的にも反応する。また、プラズマ生成室内にはプラズマ生成に必要なエネルギーが投入され続けている。このため、プラズマは原理的に熱平衡状態に緩和しない。したがって、プラズマのエネルギーと数密度には、時間的かつ空間的揺らぎ(揺動)が必ず存在する。揺動が存在しても、その揺動の特性長が、ターゲットの大きさよりも十分に短い場合、既存のプラズマCVD/ALDはプロセスで許容されるものの、原子層スケールの微細加工ではそのプラズマ揺動が相対的に顕在化する。加えて、反応性イオンやラジカルの挙動を正確に制御できていないため、現思想スケールでの均一化すら困難である。 この限界を打ち破るためには、揺動がなく、均一な数密度をもつプラズマを反応性イオンだけで作り出せればよい。このために本研究では高周波でパルス的にパルス的に作り出し、エネルギーの供給を一時的に止める。また、生成されたプラズマから反応性負イオンを作り出し、これらが熱緩和する前に、熱エネルギーの1000倍の加速エネルギーで一様に引き出す。実験では13.56MHzを用いて水素と酸素の負イオン生成を実施した。間欠的なプラズマ生成と、負イオンの生成と引き出しには成功している。水素負イオンの場合、電流量で2uAが得られる。これに電子が全く含まれていない。ところが、この電流量はプラズマソースでのプラズマ密度から期待されるシミュレーション値より少なくとも1桁少なくなっている。データを見る限り、これは13.56MHzでのプラズマの電子温度が磁気フィルター下流領域で解離性電子付着を促進する約1eVにまで十分に下がりきらないことに起因している可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置は常に改良されており、本研究の目的に対する実験を実施できている。磁気フィルターでRFプラズマを閉じ込めながらでは、準励起状態の分子が拡散流出してくる領域に出てくる電子のエネルギーが高温になっていることを明らかにできている。これはDCプラズマ源では見られていない現象で、両者の違いは電場の存在領域の違いにある。この仮説を検証するため、電場の存在領域を変更する方法を着想しており、その実験との比較によって磁気フィルター下流領域の電子温度の低下に対する機構解明に繋げる方針を立てることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況にも書いた通り、この研究のポイントは無電極でナノプロセスに必要とされる反応性負イオンを均一なエネルギーで取り出すことにある。このために必要とされるのは電子温度の低下である。電場とは外部アンテナから供給される外部電場であり、これの侵入距離を短くする実験装置へと改造した。現在すでに電子温度が比較的下がっているデータを得ており、これを使って反応性負イオン電流量の大量取り出しに取り掛かっている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
13.56MHzを用いた負イオン生成実験での電流取り出し量は2uAであり、この値は予測値の1/10であった。この原因に電子温度の値が期待していた値が約1-2eVであることに対して実測値は4-6eVと大幅に高い値になっていることにあると考えた。そこで、この13.56MHzを用いるソースから860MHzマイクロ波を用いるソースへと設計変更に入った。これにより電場侵入長が数cmに留まり、電子温度の低下が期待される。この設計変更は終了しており、図面も完成している。この製作費に次年度使用額を充当する。
|