研究課題/領域番号 |
21K18619
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
内田 儀一郎 名城大学, 理工学部, 教授 (90422435)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | プラズマジェット / 金属/樹脂接合 / プラズマ気液界面 / 活性酸素種 / シランカップリング剤 |
研究実績の概要 |
本研究では、プラズマ気液界面での化学反応を接合技術へ応用展開した新規接合法“プラズマ/溶液ハイブリッド接合”を提案し、超高強度樹脂/金属接合を実現する。本年度は、高周波プラズマジェットを各種樹脂とステンレス金属(SUS304)に照射して接合するプラズマ接合実験を実施した。具体的には、高周波プラズマジェットを樹脂と金属の両方に照射し表面改質し、その後、金属を樹脂の融点以上に加熱し2-4 MPa程度の圧力で圧接する2ステッププロセスとした。接合強度の評価は、接合した重ね継ぎ手試験片のせん断破壊強度を引張試験機で評価した。その結果、ポリカーボネートで10 MPa、ポリアミドで8.1 MPa、ポリエチレンで4.8 MPa、ポリスチレンで8.4 MPaと、従来の熱接合と比べ高い接合強度が得られた。さらに金属(SUS304)表面にシランカップリング溶液を塗布し同様のプロセスで接合試験を行った(プラズマ/溶液ハイブリッド接合)。その結果、接合強度はさらに増強され、ポリカーボネートで13 MPa、ポリアミドで11 MPa、ポリエチレンで7.3 MPa、ポリスチレンで10 MPaと、全てのサンプルにおいて約10 MPaの高い接合強度が得られた。本年度、シランカップリング剤とプラズマとの反応を利用したプラズマ/溶液ハイブリッド接合法が、樹脂/金属接合に有効であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は高周波プラズマジェットを各種樹脂とステンレス金属(SUS304)に照射して接合するプラズマ接合を実施し、その結果、従来の熱接合と比較して高い接合強度が得られた。さらに予定通りシランカップリング溶液を金属表面に塗布したプラズマ/溶液ハイブリッド接合を実施し、接合強度がさらに増強されることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、シランカップリング溶液を金属表面に塗布したプラズマ/溶液ハイブリッド接合法が樹脂/金属接合に有効であることを実証した。来年度は、接合強度の向上を図るとともに、接合メカニズム解明のために以下の項目について研究を遂行する。 (1)プラズマ気液界面反応の解析(プラズマ/シランカップリング溶液相互作用の解析) シランカップリング溶液はアミノシラン基を含有する溶液であり、大気圧プラズマ照射による気液界面での活性酸素・窒素種との反応により、接合時に反応基の大きな改質が想定される。その評価のためにシランカップリング溶液が塗布された金属表面に関して、プラズマ照射前後でFTIR計測を行い、改質の様子を定量的に解析する。また、プラズマ照射による各種樹脂表面の改質に関してもFTIR計測で解析する。プラズマ照射後の金属表面の凹凸の変化や組成変化についてもSEM-EDXを用いて評価する。 (2)各種樹脂・金属接合のプラズマ/溶液ハイブリッド接合の実施 各種樹脂と金属とのプラズマを用いた接合実験を引き続き実施する。高周波プラズマジェットで使用しているAr放電ガスに窒素や酸素や水蒸気を添加することで表面反応をさらに促進し、接合強度の向上を図る。樹脂としてCFRPやポリイミドについてもプラズマ接合を実施する。接合界面をTEM観測ならびに組成分析し、材料科学に基づいて接合メカニズムを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
外部委託予定であった試験片の材料分析を次年度としたため次年度使用額が生じた。来年度、その費用に使用する計画である。
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