研究課題/領域番号 |
21K18622
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
笹 公和 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20312796)
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研究分担者 |
坂口 綾 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00526254)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | セシウム135 / 加速器質量分析 / スパッタ負イオン源 / ルビジウム / タンデム加速器 / 微量分析 / 長半減期放射性核種 |
研究実績の概要 |
加速器質量分析法(AMS)では、Csスパッタ負イオン源からの負イオンをタンデム型静電加速器により高エネルギーに加速することで、対象核種と同重妨害核種との分離識別をおこなっている。近年、核時代の人為起源核種の一つとして、長半減期放射性核種であるセシウム135(Cs-135:半減期 230万年)の高感度検出法の開発が求められている。AMSやICP-MSなどの質量分析法では、同位体比の低さやキャリアとして添加される安定核種であるCs-133や同重体であるBa-135からの妨害により高感度の検出が難しくなっている。特に、タンデム型静電加速器を用いたAMSでは、Csスパッタ負イオン源を使用することから、セシウム同位体の分析が制限されることになる。 本年度は、Cs-135のAMSによる高感度検出法の開発を進めるために、筑波大学6MVタンデム加速器質量分析装置に設置されているNational Electrostatics Corp.製のCsスパッタ負イオン源(MC-SNICS)について、Csの代わりに同じアルカリ金属であるルビジウム(Rb)をオーブンに封入して、負イオンビームの生成試験を実施した。カソード試料からの高電流のCs負イオンビームの引き出しについて検討するために、Cs2SO4、CsNO3、Cs2CO3、CsI、CsBrを準備して、負イオンビームの質量スペクトルを測定した。また、引き出される負イオンビームの強度増大のために、添加物としてPbF2を混合してRbでスパッタした。PbF2を混合した試料では、CsS-、CsO2-、CsF2-と同定されるスペクトルが見られ、CsF2-ビームの強度が最も高い結果となった。これまでに、133Cs19F2-では最大で0.2μAの負イオンビームの生成を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スパッタ負イオン源のCsスパッタをRbスパッタに改造して、負イオンビームの引き出しを試みた。カソードに装填したCs2SO4+PbF2をRbでスパッタすることで、CsF2-ビームの強度が最も高い結果を得た。これまでに、133Cs19F2-について最大で0.2μAの負イオンビームの生成に成功するなど、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、実試料を用いたCsF2-の加速を試みる。Cs-135測定のために、試料処理方法として海水中のCs濃集法の検討を実施する。銅置換体プルシアンブルー不織布を用いて、バッチ法により海水に添加したCs-137とBa-133の吸着率の変化を調べる。また、吸着実験後の銅置換体プルシアンブルー不織布を数種類の濃度の塩酸、硝酸で脱離して、Cs脱離に最適な条件を求める予定である。Cs-135の検出については、ガス電離箱を用いる。最適なビームと検出器の設定条件をPHITS等の計算コードを用いて探索する。今年度の実験結果より、Cs2SO4+PbF2がAMSのための測定用試料として期待できる。この試料からの CsF2-ビームを筑波大学6MVタンデム加速器質量分析装置で加速して、ガス電離箱を用いてCs-135 のスペクトルを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染予防の為に,試料サンプリングのための出張や国際会議での成果発表が取り止めとなった。また、国内学会もオンライン会議となり、「旅費」の執行が当初予定よりも少なくなった。また、「その他」の項目に含まれる学会参加費等も予定より少なくなった。「物品費」については、改造するイオン源装置の部品が当初の購入予定額よりも少額で済んだことによる。 次年度は検出器関係の開発を進める予定であり、その関連部品の導入を進める。新型コロナウィルスの状況を確認しながら、試料サンプリングと学会等での成果発表を進める予定である。
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