研究課題/領域番号 |
21K18625
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 康博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80792704)
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研究分担者 |
黒澤 俊介 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (80613637)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 二重ベータ崩壊 / 無機結晶シンチレーター / ガドリニウム / GAGG |
研究実績の概要 |
ニュートリノが、それ自身の反物質であるというマヨラナ性を持つかどうかは、現在の素粒子物理学に残された重要な未解明の問題の一つである。ニュートリノがマヨラナ性を持つなら、原子核がニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊を起こすと予言されており、様々な原子核を用いたこの事象の探索が世界中で行われている。 本研究では、スーパーカミオカンデ・ガドリニウムプロジェクトのために開発した超高純度ガドリニウム精製技術を応用し、ガドリニウムを含んだ高純度無機結晶シンチレーターを開発し、それを用いてガドリニウムの二重ベータ崩壊を探索する。 先行研究では結晶中の放射性不純物由来の背景事象により感度が制限されていた。その主要な混入経路は原料であるガドリニウムの精製過程にあると考えられるため、高純度ガドリニウムを原料とすることで背景事象の大幅な低減が期待できる。本研究では高純度原料を使用することで、主要な放射性不純物の量を先行研究に比べて一桁程度低減させた結晶の精製技術を確立させ、さらに1kgスケールの結晶を用いてガドリニウムの二重ベータ崩壊を世界最高感度で探索することを目指している。 初年度である2021年度は、結晶の製造過程での放射性不純物の混入度合いを理解することを目指し、放射性不純物の量を予め評価した酸化ガドリニウムを原料とし、約100gのCe添加GAGG結晶シンチレーターを製作した。精製した結晶の放射性不純物の量をゲルマニウム結晶検出器で評価した後、切断、研磨を行い、この状態での放射性不純物および光学性能の評価を進めている。本研究の現状と計画について、「第0回シンチレータ利用技術研究会」にて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題採択後、早期に結晶製作に取り掛かり、東北大学金属材料研究所にて約100gの結晶を製作した。現在は放射性不純物を評価することにより放射性不純物の混入経路を理解する段階であり、そのための評価手法も確立しており順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き放射性不純物の評価を進めるとともに、得られた結果をもとに放射性不純物の混入を低減した結晶精製方法の研究を行う。具体的には、結晶育成環境による影響、研磨剤による影響等を評価し、影響が大きいと判明した要素については、該当する部材を低放射能のものに変更するなどの対策を行う。これにより生成する結晶の低放射能化を目指す。 また、これまでは酸化ガドリニウムを原料として結晶を生成していたが、新たに硫酸ガドリニウムを原料とした結晶の精製も行ってゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、研究打ち合わせのための出張が当初の予定よりも少なかった。次年度以降の研究打ち合わせのための旅費として使用予定である。
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