研究課題/領域番号 |
21K18633
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
坪山 透 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 応用超伝導加速器イノベーションセンター, 研究員 (80188622)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | シリコンセンサー / 素粒子実験 / MEMS / デバイス技術 |
研究実績の概要 |
Belle II などの素粒子実験で バーテックス検出器として用いるピクセルセンサーは、単結晶シリコンのウエファにCMOSプロセスを施すことで実現する。一般のシリコンウエファはガラスのような性質を落ち変形しにくいが、シリコンウエファの厚みを 100 μm 程度以下に薄化すると、簡単に曲げることができるようになる。この性質を利用して、素粒子用ピクセルセンサーを薄化し、ビームチェンバーにピクセルセンサーを直接貼り付けることができれば、粒子発生位置の測定の分解能や精度が向上し物理現象のより高度は解明に役立つ。 本研究は素粒子用ピクセルセンサーを薄化し、湾曲させた状態での動作特性を測定するものである。 その研究のためには (1) 使用するピクセルセンサーの製造と評価 (2) センサーの薄化(3)フレキシブル読み出し回路基板(フレキシブル基板)の設計製造 (4) ピクセルセンサーのフレキシブル基板への組み付け(5) 組みつけ後の試験評価 という段階がある。 2021年にピクセルセンサ DuTiP1 の開発と製造を行い評価システムを構築した、2022年度には DuTiP1 の評価方法を確立し、実際に評価結果を得た。またフレックスと同じ構成ののプリント基板を製造し評価を開始した。2023年には2022年の結果に基づき、KEKテストビームライン(ARTBL)において DuTiP1 の素粒子ビームに対する応答を測定した。 2023年度は、研究当初は本研究の最終年度としていたが、個人的な理由(後述)で研究に停滞がおき、フレキシブル回路基板の設計が終わらなかった。こうしたことがら、本研究は1年延長し、フレキシブル基板の製造/ピクセルセンサーの組み付け/最終評価は 2024年度に行うことになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本実験は2021年度に開始し、2023年度に終了する計画であった。2021年度に製造したピクセルセンサー DuTiP1 は、Belle 実験で使うことを想定して設計されている。その動作特性は2022年度に評価用セットアップで ベータ線に対する応答を確認した。さらに 2023年度にはKEKにおけるビーム試験で高エネルギー素粒子に対する応答も確認できた。こうしたことから DuTiP1 ピクセルセンサーは本研究で評価に用いることにした。またフレキシブル基板に先立つ、試験基板の製造を行い、ピクセルセンサーが動作することが確認できた。その結果に基づき、フレキシブル基板の設計を開始した。そして、引き続き、2023年度中にフレキシブル基板に実装したDuTiP1ピクセルセンサーを用いて、センサーを湾曲させた状態での試験/評価を行う予定だった。 しかし2023年には、個人的な理由(後述)でフレックス読み出し基板の製造が終了できず、そこへのセンサー組み付けと評価などは達成できなかった。技術的な理由で研究が遅滞してるわけではない。 こうしたことから、若干の遅れはあるが、最終年度(2024年度)中に本研究の実験素遂行し、研究を終了することは可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
上に述べたように、2024年(最終年度)での製造/評価に向けて、DuTiP1 ピクセルセンサーの評価、評価用フレキシブル基板の設計を進めてきた。 したがって今後は(1) DuTiP1 センサーを100 μm 以下に薄化する。 (2) 2023年に準備したフレキシブル基板のデザインを完成させ、製造を行う。 (3) ピクセルセンサーをフレキシブル基板に実装する。(4) 評価システムを用いて、DuTIP1 の特性の試験を行い、予備実験との比較を行う。ここでの評価は実験室で行うため、レーザー光やβ線ソースを用いる。 (5) 次に、いくつかの半径の円筒に(4)のセンサーを固定する。この作業は薄化したピクセルセンサーが座屈しないよう注意深く行う。屈曲した状態のDuTpI1の特性を測定する。最終的にはBelle 素粒子実験で用いるビームパイプである、半径1cmの円筒を用いて試験する。変化があれば、センサーの曲げ半径とセンサー性能の傾向を調べる。(6) 円筒に貼り付けた状態でテストビーム実験を行い、高エネルギー素粒子への応答を確認する。というステップで研究を進める。 2024年は最終年度であるため、3月までには結果をまとめて、学会等で結果を報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:2023年度は、備考欄に示す理由で本研究に割く研究時間が一時期不足した。2022年度内におこなう研究項目のうち、フレキシブル基板の設計が終了せず、その製造を開始することができなかった。その一方使用予定のピクセルセンサーの評価は継続し終了することができた。 フレキシブル回路の製造、ピクセルセンサーの組み付け、それに続く評価はを行うことができなかった結果、。約89万円が未使用となった。そこで2024年度に使用するための申請を行った。 使用計画: 2024年度はフレキシブル基板製造ならびにピクセルセンサーの組み付け(約60万円)を年度前半に行い、年度後半には、評価を行うために20万円の消耗品が必要となる。評価の結果は国内の学会等で報告する予定で本研究の旅費として使用する予定である。
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備考 |
(1) は過去の科研費で準備したWeb page ですが、今でもデータがアップデートされています。(2) は開発者のWEBぺーじ、(3) はKEK測定器開発室に属するページです。
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