本研究の最終目的は、シリコン以外の新素材半導体を用いて、量子イメージング(可視化)に欠かせない半導体検出器(カメラ)の耐放射線能力を飛躍的に上げ、 高放射線環境下での量子イメージングに革新を起こすことである。 新素材半導体として国内での素子開発が活発で、世界で初めての検出器開発となる CIGS、 AlNの二種を候補とし評価を進める。 初年度は、重粒子線がん治療装置(HIMAC)の400 MeV/核子のXeイオン照射により、CIGS検出器の熱処理による放射線損傷の回復を確認し、回復型の粒子検出器実現への大きなマイルストーンを達成した。また、AINによる検出器は準備中であるが、同じくワイドギャップ半導体で放射線耐性が期待できる、窒化物半導体のGaNについて検出器を作り、こちらもXeイオンによる粒子検出に成功している。 2年目であり、最終年度である2022年度は、CIGS検出器について初年度の10倍の放射線損傷を与えた。信号の出力が減り、照射前の半分以下まで低下したが、熱処理により、ほぼ損傷前の出力まで回復することを確かめた。また、回復の際に照射と回復を二回に分けることで、繰り返し回復が可能であることを明らかにした。今までの2ミクロン厚に加え、5ミクロン厚のCIGS検出の評価も行い、厚みに比例した出力が得られている。GaNに関しては、ストリップ構造の検出器に挑戦し、各ストリップでのXeイオンの検出に成功し、位置検出器製作のマイルストーンを達成した。今回の検出器は高電圧がかけれない状態での評価となったが、現在その改良版を製作中である。
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