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2023 年度 実施状況報告書

2台の超伝導重力計を用いた重力水平勾配観測による地震即時重力変化の検出

研究課題

研究課題/領域番号 21K18644
研究機関東京大学

研究代表者

今西 祐一  東京大学, 地震研究所, 准教授 (30260516)

研究分担者 西山 竜一  東京大学, 地震研究所, 助教 (10835101)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2025-03-31
キーワード超伝導重力計 / 地震即時重力変化
研究実績の概要

2023年度は,長野県松代で稼働中の2台の超伝導重力計の維持を行うとともに,絶対重力測定との比較による精密な感度検定などを行った.絶対重力測定は,2023年6月23日から26日にかけて行われた.気象などの条件に恵まれたため,約25,000ドロップの標準偏差が約4.2マイクロガル,平均値の標準誤差としては0.027マイクロガルという,非常に高い精度を達成した.これは,一地点における絶対重力測定結果としては,おそらく国内では最高レベルの精度である.このデータを用いて,2台の超伝導重力計の感度検定を行った.潮汐変化が小さい時期にあたっていたものの,絶対重力測定のばらつきが小さいことにより,2台の超伝導重力計ともに約0.06%の相対精度でスケールファクターを決定することができた.これらの結果について,論文にまとめた(測地学会誌,受理ずみ).超伝導重力計の精密な感度決定ができたことで,2台の記録を厳密に比較することが可能となった.一方,CT #036には,リアルタイムシステムをベースとしたオリジナルの高速データ収録システムを導入した.これは,超伝導重力計のためのデータ収録システムとしては,精度の点において現状で考えられる最高のものであり,オプションで高レートでのサンプリングが可能である.時定数が短く,浅いフィルターの出力を,このシステムにより20Hzのレートで収録することを開始した.以上のような作業を進めていたところ,2024年1月1日に能登半島でM7.6の地震が発生した.地震波のP波が松代に到達する直前に,2台の超伝導重力計の記録に見慣れない変化が現れていることがわかった.地震即時重力変化の信号としては大きすぎるようであり,その原因について慎重に解析を進めている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

そう広くない観測室内で2台の超伝導重力計を動かしている関係で,廃熱処理のため扉を常時開放することにした.これにより,室温の異常な上昇は防ぐことができたが,坑内の湿気が入って湿度が上昇し,2台ともにデュワーネック部の結氷の問題が深刻になった.2台ともに機器ノイズが最小であるような時期が限られることとなり,応答特性や時刻精度などの分析が思うように進んでいない.

今後の研究の推進方策

高い湿度によるデュワーネック部の結氷については,CT型では約4か月,iGrav型では約6か月ごとに冷凍機を外してクリーニングをすれば良いことが,経験的にわかってきた.この作業は,かなりの量の液体ヘリウムを蒸発させてしまうため,本来はなるべくやらない方が良い作業だが,2台の重力計が同時にベストの状態に保たれている期間を確保するため,作業サイクルを計画的に組むようにしたい.2024年1月1日の地震については,既存のモデルに限らず,さまざまな可能性について検討していきたい.

次年度使用額が生じた理由

「現在までの進捗状況」に記したように,記録の分析が思うように進んでいないこともあり,冷凍機のオーバーホールを延期するなどして研究期間を1年延長した.次年度には,適切なタイミングで冷凍機のオーバーホールを実施したい.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Postseismic gravity changes after the 2011 Tohoku earthquake observed by superconducting gravimeters at Mizusawa, Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Tamura Yoshiaki、Kazama Takahito、Nishiyama Ryuichi、Matsuo Koji、Imanishi Yuichi
    • 雑誌名

      Earth, Planets and Space

      巻: 75 ページ: -

    • DOI

      10.1186/s40623-023-01901-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 絶対重力計を用いた重力鉛直勾配の測定2023

    • 著者名/発表者名
      今西 祐一、西山 竜一、本多 亮
    • 雑誌名

      測地学会誌

      巻: 69 ページ: 8~17

    • DOI

      10.11366/sokuchi.69.2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Detection of Air Temperature and Wind Changes Synchronized With the Lamb Wave From the 2022 Tonga Volcanic Eruption2023

    • 著者名/発表者名
      Watada Shingo、Imanishi Yuichi、Tanaka Kenji
    • 雑誌名

      Geophysical Research Letters

      巻: 50 ページ: -

    • DOI

      10.1029/2022GL100884

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 富士山における2台のFG5による絶対重力測定(2022年9月)-相対重力計検定ラインの構築およびFG5の器差検定-2023

    • 著者名/発表者名
      今西祐一・西山竜一・本多亮
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2023年大会
  • [学会発表] 富士山の重力観測網の構築とその活用2023

    • 著者名/発表者名
      本多亮・今西祐一・西山竜一・名和一成・風間卓仁
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2023年大会
  • [学会発表] 国立天文台水沢VLBI観測所の超伝導重力計で観測された2011年東北地方太平洋沖地震発生後の重力変化(その2)2023

    • 著者名/発表者名
      今西祐一・田村良明・風間卓仁・西山竜一・松尾功二
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2023年大会
  • [学会発表] 日本縦断測線を用いたバネ式相対重力計のスケールファクター検定2023

    • 著者名/発表者名
      若林環・風間卓仁・大島弘光・岡田和見・今西祐一・西山竜一・長縄和洋・大柳諒・大倉敬宏・吉川慎
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2023年大会
  • [学会発表] ラコスト型相対重力計の分解2023

    • 著者名/発表者名
      風間卓仁・吉川慎・岡田和見・若林環・西山竜一・大柳諒・今西祐一
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2023年大会

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公開日: 2024-12-25  

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