研究実績の概要 |
本年度は主に3種の研究内容を展開した。(1)地球外試料中のシリカ鉱物の鉱物分析、(2)シリカ鉱物の加熱・冷却実験、(3)トリディマイトのX線回折実験の3種である。 (1)については、主に月隕石と火星隕石試料中に含まれるシリカ鉱物に注目してEPMAによる組成分析を行った。月隕石は、斜長岩質のTouat 005, NWA 13907, 13484, 14064, 11421, Tisserlitine 001, トロクトライト質のNWA 13859, 海の玄武岩のNWA 14137、また、火星隕石は、NWA 12241, 6963, 13327, 14127, 12965, 13716, 13190, 13366(すべてシャーゴッタイト)であった。いずれの試料も少量のシリカ鉱物が見出され、光学顕微鏡による観察の結果、ほとんどの試料が衝撃変成作用によりガラス化していることが分かった。これらの試料の分析と並行して、JAXA小惑星探査機はやぶさ2がサンプルリターンした小惑星リュウグウ試料の鉱物分析を行った。シリカ鉱物が含まれるかどうかを合計13試料のEPMA分析を通して検証したが、シリカ鉱物は全く含まれないことが明らかになった。 (2)については、シリカ鉱物の主要相(石英、クリストバライト、トリディマイト)のうち、特に注目すべきトリディマイトで、実験に使用する試料と実験条件の選択を実施した。真空炉を用いて実験を予定しているが、油拡散真空ポンプの納期が大幅に遅れており、納入され次第、実施を開始する状況となっている。 (3)神奈川県湯河原産の安山岩に含まれるトリディマイトは地球外試料に広く見られるトリディマイトと同様で、MCタイプの構造であり、双晶組織構造を持つことが分かった。合成物との関連で、地球環境や隕石環境の特殊な冷却過程と双晶の関係の調査が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に引き続き月試料、火星試料に含まれるシリカ鉱物の同定を実施する予定である。分析予定の試料は、月試料がNWA 6950, NWA 14526, NWA 13408, Hassi Touil 001, NWA 12592, NWA 13964, NWA 14280, 火星隕石がNWA 14607, NWA 13187, NWA 7034である。また、結晶質(非角レキ岩)のユークライト隕石(Al Haggounia 003, NWA 10364, NWA 10438, NWA 11011, NWA 11247, NWA 13415, NWA 13516, NWA 13636, NWA 13787)に注目し、Ono et al. (2021)で考察されているユークライト中の各種シリカ鉱物の転移過程がこれら新しく分析する試料に対しても見られるかについても検証を行う。シリカ鉱物の加熱冷却実験については、出発物質として、地球産のPOタイプのトリディマイト、および集積岩質ユークライトに含まれるMCタイプのトリディマイトを用いて、室温から600度までの加熱を行い、その後、毎時100度~0.1度の幅で冷却させて得られるトリディマイトの相同定を実施する予定である。これら一連の地球外試料、および実験後試料に含まれるシリカ鉱物のX線回折実験も引き続き実施予定である。最終的にこれらの結果を総合して、地球外試料に応用可能な地質温度冷却度計を構築することを目指す。
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