研究課題/領域番号 |
21K18647
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
東 真太郎 東京工業大学, 理学院, 助教 (60771293)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 回転式ダイヤモンドアンビルセル / 変形実験 / 高温高圧 / 海洋地殻 / 下部マントル / 高温技術 / イメージ炉 |
研究実績の概要 |
本研究は、応募者グループが独自に開発した回転式ダイヤモンドアンビルセル(DAC)における新たな高温技術を切り開くとともに、下部マントル領域(>23GPa)に沈み込んだプレートの海洋地殻部分を構成する高圧鉱物の変形特性の解明に貢献することを目的とする。 現在、新たな加熱システムとして回転式DACに近赤外線集光加熱(イメージ炉)を導入し、まずその加熱テストや最適化を進めている。導入前の簡易的な予備実験では773 Kまでの加熱に留まっていたが、現在1000 Kまでの加熱が可能となった。この加熱システムの仕様を考えると1300ー1400 Kまでの加熱が十分実現可能であり、最終年度ではこの加熱システムを利用した高温での変形実験に取り掛かる予定である。 加熱システムの開発と並行して、地殻物質の構成鉱物の高圧相である含水スティショバイト(SiO2)の変形実験をSPring-8(BL47XU)で行った。実験条件は圧力20ー55 GPa、温度は室温で行った。用いたスティショバイトの含水量は1750±140 ppm H2Oである。XRDによる測定・解析からスティショバイトの流動強度を推察した。得られた結果を基に、その他の下部マントルの構成鉱物であるブリッジマナイト((Mg,Fe)SiO3)やフェロペリクレース((Mg,Fe)O)と比較すると、含水スティショバイトはブリッジマナイトより強度が優位に低く、フェロペリクレースとほとんど同じくらいかやや高い流動強度を示した(圧力40-45 GPa, 室温)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では今年度の後半から高温の変形実験に手をつけている予定ではあったが、加熱システムの導入が遅れたこともあり、それらの実験が最終年度にずれ込むことになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、導入した加熱システム(イメージ炉)による高温と、回転式ダイヤモンドアンビルセルによる変形実験の組み合わせにより、含水スティショバイトの高温高圧ねじり変形試験を行う。変形実験はSPring-8のBL47XUで行い、高輝度X線を利用した応力測定と、歪の決定を行うことで流動強度の決定を試みる。そして、変形実験の際は、主に温度を変化させることで、流動強度に対する温度依存性の検証をメインに行う予定である。それと並行して、加熱システムの改良を進めることで、最高温度(1000 K)の更新を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では回転式ダイヤモンドアンビルセルを使用した変形実験を主として行っている。変形試料に接するダイヤモンドアンビルは、実験を何度か繰り返すと使用できないほどの割れが生じるため、消耗品として扱っている。今年度、実験に使用していたダイヤモンドアンビルも複数個破損したため、再購入を予定していたが、その程度から割れた部分を研磨、加工することで当初必要とされたものより非常に安価かつ早急に対応することができたため、次年度使用額が生じた。しかし、結局は消耗品であり、研磨したダイヤモンドアンビルはオリジナルのものより耐久度が低い。そのため、次年度使用額は新たなダイヤモンドアンビルの購入に使用する予定である。
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