研究課題/領域番号 |
21K18649
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
福士 圭介 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (90444207)
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研究分担者 |
高橋 嘉夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10304396)
濱田 麻希 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (90635997)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 炭酸カルシウム1/2水和物 / アルカリ塩湖 |
研究実績の概要 |
カルシウム炭酸塩は地球上に普遍的に存在し、炭素循環に関与するとともに、過去の地球環境の変遷を記憶する重要な媒体である。これまでカルシウム炭酸塩として6つの鉱物種が認識されてきたが、これらに加え2019年に7つ目のカルシウム炭酸塩の結晶相(Calcium Carbonate Hemi-Hydrate: CCHH)が室内合成実験から見出された。CCHHは実験室では簡単に合成することができるが、自然界における生成は報告されていない。CCHH自然界で見過ごされていることは、この物質が関わっている地球科学的プロセスを我々が見落としているからに他ならない。本研究はCCHHを自然界で発見し、その地球惑星科学的意義を解明することを目的とする。 本年度は様々な濃度のCaCl2, MgCl2, Na2CO3混合溶液からのCCHH合成実験を行った。反応時間は1時間とした。その結果、63個のサンプル中、約半数の試料でCCHHが生成していることが認められた。先行研究では溶液中のMg濃度が高い場合に生成することが報告されていたが、網羅的な水質条件から合成実験を行った本研究では、Mg濃度が比較的低い条件でもCCHHは生成することが明らかとなった。 申請者は世界に分布するアルカリ塩湖の水質をレビューし、アルカリ塩湖の水質はモノハイドロカルサイトと平衡、あるいはやや過飽和にあることを示していた。ここでやや過飽和の水質に着目すると、レビューした湖水の半分以上は、モノハイドロカルサイトよりほぼ正確に0.5ログ単位分過飽和にあることが認められていた。今回行った合成実験において、CCHHの生成が認められた試料において、反応溶液の分析を行いCCHHの溶解度の制約を行った。その結果、CCHHの溶解度はおよそ0.5ログ単位分程度モノハイドロカルサイトよりも高いことが明らかとなった。この結果は当初予想した通り、世界のアルカリ塩湖の水質はモノハイドロカルサイトおよびCCHHの生成により支配されている可能性を強く示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内合成実験から、Calcium Carbonate Hemi-Hydrate (CCHH)の溶解度は当初予想した通り、アルカリ塩湖でみられるものとほぼ一致することを明らかにした。また、CCHHが短時間であれば先行研究で推定されていたよりも幅広い水質条件で生成することを明らかにした。以上よりおおよそ順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
Calcium Carbonate Hemi-Hydrate (CCHH)の溶解度から推定される水質とほぼ一致するモンゴル南部のアルカリ塩湖の調査を行う。調査では湖沼で自生する炭酸塩鉱物を採取し、適切に処理したあと、鉱物学的手法および放射光を用いた分析を行う。 先行研究ではCCHHの生成にはMgが不可欠であることが示されたが、本研究ではMgは先行研究で予想されるほど重要ではないことが明らかとなった。本年度はMgを含まないCCHHを合成し、これまでに報告されるMgを含有したCCHHと鉱物学的特徴を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初成果報告のために旅費予算を使用する予定であったが、新型コロナ感染の影響により当初予定したすべての学会発表がオンラインとなった。一方、オンライン発表では関連研究者との議論が制約されるため、次年度において対面での学会に参加するために予算を繰り越した。したがって繰り越された予算は主に成果発表のための旅費に利用する。
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