研究課題/領域番号 |
21K18649
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
福士 圭介 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (90444207)
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研究分担者 |
高橋 嘉夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10304396)
濱田 麻希 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (90635997)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 炭酸カルシウム1/2水和物 / アルカリ塩湖 / 溶解度 |
研究実績の概要 |
これまでカルシウム炭酸塩として6つの鉱物種が認識されてきたが、これらに加え7つ目のカルシウム炭酸塩の結晶相(Calcium Carbonate Hemi-Hydrate: CCH)が室内合成実験から見出された。CCHは実験室では簡単に合成することができるが、自然界における生成は報告されていない。本研究はCCHを自然界で発見し、その地球惑星科学的意義を解明することを目的とする。 世界に分布するアルカリ塩湖の水質をレビューから、調査したアルカリ塩湖の半数以上は、湖水水質がモノハイドロカルサイトよりほぼ正確に0.5ログ単位分過飽和にあることが認められた。本年度はCaCl2-MgCl2-Na2CO3溶液を複数の濃度条件下で撹拌し、過飽和法により生成物と溶液組成の時間変化を観察することで溶解度を精密に推定した。その結果、2系統の測定でCCHの溶解度測定に成功し、CCHの溶解度は25℃の温度条件においてモノハイドロカルサイトよりも0.5ログ単位程度高いことが明らかとなった。 また本年度はモンゴルのアルカリ塩湖(オルゴイ湖・オログ湖)において現地調査と試料採取を実施した。CCHは極めて短命な準安定相であり、水溶液中では時間とともに速やかに相転移する。変質は低温条件で遅延されるため、湖水温度が低い12月に調査を行った。固相の変質を少しでも遅らせるため、固相分析用に採取した湖水は0度以下で保存し、当日中に超遠心分離機により固液分離を行った。回収した懸濁物は湿度の低い部屋で自然乾燥し、シリカゲルと共に保存した。帰国後、固体試料の粉末X線回折測定を行ったところ、XRDプロファイルからはCCHの最強ピークに相当する位置にピークが認められた。この結果はCCHがアルカリ塩湖に自生することを示唆するものであるが、その存在を確定するためにはさらに複数の分析による裏付けが必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCHの精密な溶解度測定から、アルカリ塩湖の水質はCCHの平衡状態に近いことを示すことができた。また、アルカリ塩湖の懸濁物の分析から、湖水にCCHが自生する可能性を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
アルカリ塩湖から採取した懸濁物試料をラマン分光・X線吸収分光など複数の手法により分析し、CCHの存在可能性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
モンゴルより採取した試料の分析を年度中に実施することができなかった。翌年度、試料分析にかかる費用および学会における成果発表に使用する。
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