研究課題/領域番号 |
21K18650
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
ジェンキンズ ロバート 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (10451824)
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研究分担者 |
長谷川 卓 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (50272943)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 古生態系復元 / 個別アミノ酸窒素同位体比分析 / 古食性 / 化石 / 殻体内アミノ酸 / 化石アミノ酸 |
研究実績の概要 |
概要:本研究は,生物を構成する各アミノ酸の窒素同位体比分析に基づく栄養段階推定法を古生物(化石試料)に応用する試みである.令和4年度は化石試料の収集および化石への他生物の混入痕跡状況の把握に努めた. 化石の収集:米国に分布する白亜系から保存良好な軟体動物化石を多数採集することができた.また,北海道に分布する新第三系から軟体動物化石とともに複数の鯨類化石を採集することに成功した. 化石試料の保存性評価:本研究で実施する化石硬組織中のアミノ酸の窒素同位体比分析においては,他の生物による遺骸への混入がない試料を利用しなくては分析そのものに意味がなくなるため,遺骸への生物侵食を把握し,侵食部分を排除した分析試料を準備することが必須である.そこで,採集した試料(化石硬組織(貝殻,骨))について,断面研磨面や薄片を製作し,実体顕微鏡や偏光顕微鏡,走査型電子顕微鏡などによる観察を行って,化石の保存性とともに生物侵食について評価した.鯨類の骨化石については,骨外周部の多くの部分に微細な生物浸食痕が見られ,骨中央部には骨硬組織への直接的な生物侵食は見られなかった.また,骨の海綿組織部分の空隙(もともとは脂質などが充填されていたであろう部分)には,主に硫酸還元菌の活動によって沈殿するフランボイド状黄鉄鉱などが一部密集して存在していた.これら他の生物による混入部分を排除した粉末試料を作成し,令和5年度に実施するアミノ酸同位体比分析に供する準備を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極めて保存良好な白亜紀の化石試料が得られたことは大きい.これにより,古生物の食性や栄養段階を化石硬組織中の個別アミノ酸窒素同位体比分析によって復元する手法の適用可能年代幅を評価する目処がついたと言える.また,遺骸への生物浸食度合いの評価が進み,実際の分析試料に供する試料の選定ができた.これらを鑑みると,本研究の実施状況としては順調に推移していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に化石殻体およびアミノ酸の保存状況などを検討した新生代新第三紀中新世のポーランド産軟体動物化石および令和4年度に試料採集と化石の保存状態を確認した試料について,実際に個別アミノ酸窒素同位体比分析に供するための処理を進める.アミノ酸の保存状態の評価が未完了の試料については引き続き評価を進める.化石硬組織そのものおよび硬組織中の化石アミノ酸の保存状態の評価が完了した試料について,改めて同位体比分析に供する粉末試料を製作し,アミノ酸を抽出する.抽出したアミノ酸について,同位体分析に適した誘導体化を実施し,同位体比の測定を行う.得られた分析値をもとに,各産地における古生物の栄養段階を求める.これを従来の古生物学的しゅほうによる食性解析の結果とも比較し,個別アミノ酸窒素同位体比分析に基づく古生物の栄養段階推定法の化石試料への適用可能性を明らかにする.
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