太陽系外縁領域を起源とする彗星核やカイパーベルト天体は,2つの多孔質小氷天体が合体した接触連星として観察されることが多い.この領域で接触連星が高頻度で形成される理由を調べるためには,母天体である氷微惑星同士の衝突後の破片速度分布を調べ,破片速度分布と破片質量分布の関係から氷微惑星の再集積条件を決定する必要がある.本研究では新たな破片速度計測法として,デジタル画像相関法(DIC法)を取り入れた衝突実験を行ってきた. 今年度は,DIC法を氷微惑星模擬物質である雪・氷層構造試料に再度適用することを試みた.昨年度は小さな標的を用いたことでコアのランダムパターンを認識することができなかった.そこで,標的の直径を10cm,コア直径を5cmと大きい半球標的を用意し,コアのパターンを明瞭化するために表面を白く塗り,その上から黒砂でパターンをつけた.実験は神戸大学の低温室に設置された横型二段式軽ガス銃を用いた.弾丸は直径4.7mmのポリカーボネート球で,衝突速度は2km/sである.温度は-15℃とした. 上記の改善によって,雪・氷層構造標的のDIC解析が可能になった.解析の結果,マントル破片は衝突点を中心に放射状に噴出するのに対し,氷コアはマントルよりも速く,コア全体が同じ速度で弾道下流方向に移動していることがわかった.これらの速度は,衝突から約0.1ms後でマントル破片が5m/s以下に対し,コアは15m/s以上であった. また,雪,氷及び層構造標的を用いた衝突破壊実験を行い,衝突破壊強度を求めた.その結果,雪と氷標的の衝突破壊強度には衝突速度依存性があり,その依存性を考慮した衝突破壊強度を求める経験式を得た.また,層構造標的の氷コアと氷標的の結果を比較した結果,層構造標的の氷コアの方が衝突破壊強度が大きくなった.つまり,覆っている雪マントルによって破壊の程度が緩和されていることが示唆された.
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