研究実績の概要 |
本研究は地球上部マントルおよび下部マントルの酸化鉄の価数分布に制約を加え、地球史におけるマントルの酸化還元度進化を明らかにすることを目的としている。これまでの実験から、次のことが明らかとなった。1)岩石惑星形成時における金属核と岩石マントルの実効的な分離圧力が20万気圧を超えるとマグマオーシャン中の2価鉄の電荷不均化反応が効率よくすすみ、現在の地球上部マントルに比べて約一桁程度高い3価鉄が生成する(Kuwahara et al., 2023, Nature Geoscience)。2)下部マントル最上部圧力条件(23万気圧~27万気圧)ではブリッジマナイトと共存するマグマ間の2価鉄と3価鉄の分別はほとんど起こらず、その比は一定を保つ(Kuwahara and Nakada, 2023, Earth and Planetary Science Letters)。こうした結果とこれまでの地質記録をもとに、次のような地球マントルの酸化還元進化モデルを提案した。1)核-マントル分離時およびその後の固化過程において、現在の上部マントルよりも酸化的なマントルが形成する。2)地球形成後に降着した小天体に含まれる金属鉄によって還元的な上部マントルと酸化的な下部マントルの2層構造が形成する。 また、本年度はこれまでに行った金属核形成期におけるマグマオーシャン中の2価鉄の電荷不均化反応に関する実験を当初の予定を超えたさらなる圧力まで(38万気圧)拡張することができた。また、ブリッジマナイト―マグマ間の2価鉄と3価鉄分配に関する高圧実験および放射光施設での分析についても引き続き酸素フガシティー依存性など調べる研究にも着手することができた。
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