研究課題/領域番号 |
21K18656
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
辻野 典秀 岡山大学, 惑星物質研究所, 助教 (20633093)
|
研究分担者 |
山崎 大輔 岡山大学, 惑星物質研究所, 准教授 (90346693)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
キーワード | ボロンドープダイヤモンド / 高温高圧 / ヒーター / 快切削性 |
研究実績の概要 |
現在まで川井方高圧発生装置で最も安定的に高温発生が可能なヒーター材として半導体のグラファイトが用いられている。しかしながら、グラファイトは5 GPa以上で絶縁体であるダイヤモンドに相転移するためにマントル深部条件でのヒーターとして使用できない。次に有望なヒーター材は同じく半導体であるCa添加LaCrO3であるが現在この素材の生産は終了し、代替品であるSr添加LaCrO3では2300 Kを超える安定した加熱が困難である。均質な加熱ができる半導体だけでなく、高融点金属(Re等)もヒーター材として使用されるが、高温条件ほど局所的な異常発熱が起きやすくなり、安定かつ長時間の高温発生が困難になる。そこで、本研究では、ボロン添加ダイヤモンド(BDD)が高融点かつ温度上昇と共に電気抵抗が低くなるような半導体特性を持つことに注目する。新たなヒーター材として加熱の安定性と形状加工の際の快削性とを兼ね揃えたBDD焼結技術を確立することで、下部マントルに相当する超高圧力条件下でもマントル温度を優に超える高温でのマントル鉱物の融解実験を行なえるようにすることを目的とする。 2021年度には、快削性を持つBDD焼結対合成のため、ダイヤモンド粉末と非晶質ボロンの混合比及び焼結条件の最適化を行った。その結果、ボロンの添加量に伴い、BDDヒーター抵抗の減少が観察された。本年度で最も安定した加熱ができた条件は0.5%のボロンの添加量及び1300度・30minである。次年度にはこの条件で合成したBDDヒーターの圧力発生効率の確認やさらなる高温発生テスト・ケイ酸塩鉱物の融解実験を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、快削性ボロン添加ダイヤモンド(BDD)焼結体を焼成するための技術開発を行った。具体的には、ダイヤモンド中のボロンの拡散速度がダイヤモンド-グラファイト相転移速度よりも優位に速いことを利用し、ダイヤモンド粉末と非晶質ボロンの混合体を真空下で焼成することにより、BDD焼結体の作成を可能とした。また、このBDD焼結体はNC加工機を用いて円筒形に加工することが可能であることから、快削性を持つことの確認ができた。さらにこの円筒形に成型したBDD焼結体を川井式高圧発生装置の高圧下での加熱を行うヒーターとして使用することで、15万気圧~25万気圧に相当すると思われる荷重条件下で2000℃以上の高温の発生が可能であることも確認された。さらに、より安定した加熱を可能とするため、ボロンの添加量及び真空焼結条件の最適化を行った。この結果、ボロン添加量0.5%、1300℃・30 minという条件で作成したBDD焼結体が最も安定した加熱が可能であることが分かった。これらのことから、本年度はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度では、快削性を持つボロン添加ダイヤモンド(BDD)焼結体の作成技術の確立を行い、BDD焼結体を用いた高圧下での高温発生の確認がなされた。そこで、次のステップとして、圧力発生効率の確認、及び、高温発生による下部マントルに相当する圧力下でのマントル鉱物の融解実験を行う予定である。圧力発生効率の確認には、放射光を用いたその場X線観察による各荷重・温度での圧力の測定を行うことにより、他のヒーターを用いた時と比較し圧力の発生効率がどのように変わるのかを測定する。また、融解実験にはカンラン石のMg単成分であるMg2SiO4を出発物質として用いることで、地球マントル物質の融解関係を明らかにするのに十分な能力を持つことを確認する予定である。
|