研究課題
現在まで川井方高圧発生装置で最も安定的に高温発生が可能なヒーター材として半導体のグラファイトが用いられている。しかしながら、グラファイトは5 GPa以上で絶縁体であるダイヤモンドに相転移するためにマントル深部条件でのヒーターとして使用できない。次に有望なヒーター材は同じく半導体であるCa添加LaCrO3であるが現在この素材の生産は終了し、代替品であるSr添加LaCrO3では2300 Kを超える安定した加熱が困難である。均質な加熱ができる半導体だけでなく、高融点金属(Re等)もヒーター材として使用されるが、高温条件ほど局所的な異常発熱が起きやすくなり、安定かつ長時間の高温発生が困難になる。そこで、本研究では、ボロン添加ダイヤモンド(BDD)が高融点かつ温度上昇と共に電気抵抗が低くなるような半導体特性を持つことに注目する。新たなヒーター材として加熱の安定性と形状加工の際の快削性とを兼ね揃えたBDD焼結技術を確立することで、下部マントルに相当する超高圧力条件下でもマントル温度を優に超える高温でのマントル鉱物の融解実験を行なえるようにすることを目的とする。最終年度となる2022年度には、2021年度に最適化した合成条件で焼結されたBDD焼結体をヒーターとして用いて、25万気圧条件でのFo組成の融解実験及び放射光を持ちいた圧力発生効率の測定を行った。その結果、25万気圧条件下で、Fo組成が部分融解することで、これまでに報告されているようにMgOがリキダス相であることが確認された。これにより、実際に2000℃を優に超える超高温の発生が確認された。さらに、放射光を用いたその場圧力測定から、35万気圧までの圧力条件において、その場観察実験に使われるTiB2ヒーターと同程度の圧力発生効率を持つことが明らかとなった。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Physics of the Earth and Planetary Interiors
巻: 337 ページ: 107010~107010
10.1016/j.pepi.2023.107010
American Mineralogist
巻: 107 ページ: 1249~1253
10.2138/am-2022-7959
Geophysical Research Letters
巻: 49 ページ: 1-9
10.1029/2022GL098549