研究課題/領域番号 |
21K18658
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
白石 史人 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (30626908)
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研究分担者 |
富岡 尚敬 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30335418)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 集束イオンビーム加工 / 微生物 |
研究実績の概要 |
マンガン団塊などに含まれる微生物の分類群を,集束イオンビーム(FIB)加工薄膜中で同定することを目的とし,本年度はその基礎となる実験を行った. まず初めに,人工的に合成したマンガン酸化物(δ-MnO2)と,SYBR Green Iで核酸染色した大腸菌を混合し,樹脂に包埋した.この試料からFIB加工薄膜を作成し,走査型透過X線顕微鏡(STXM)で分析を行った.炭素K吸収端においては,大腸菌が存在する部分で細胞由来のスペクトルがわずかに検出された一方で,SYBR Green I由来のスペクトルは検出不能であった.窒素K吸収端においては,細胞由来のスペクトルがやや強く検出されたが,やはりSYBR Green I由来のスペクトルは検出不能であった.また,共存するδ-MnO2のマンガンL吸収端のスペクトルは本来のMn(IV)ではなく,Mn(II)に類似しており,FIB加工によるビームダメージの可能性が疑われた. 次にδ-MnO2とSYBR Green I染色した大腸菌の混合物を炭素支持膜付き銅グリッド上に載せ,STXM分析を行った.その結果,δ-MnO2のマンガンL吸収端のスペクトルは多くが本来のMn(IV)を示し,これはFIB加工によるビームダメージによってMn(IV)がMn(II)に還元されることを示している.しかしながら,銅グリッド上においても一部のδ-MnO2はMn(III)を示し,これは共存する有機物とX線によってマンガンの還元が起きていることを示すのかもしれない.一方,SYBR Green Iは樹脂包埋試料と同様に検出不能であり,SYBR Green IがSTXMでの検出に適していないことを示している.それゆえ今後は当初の計画通り,他の標識物質を探索する必要がある. 本年度はまた,新手法の潜在的適用対象であるスフェルライトに関しても,予察的検討を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉱物と蛍光標識した微生物が混在した試料に対して集束イオンビーム加工薄膜を作成し,走査型透過X線顕微鏡で分析するという一連の基礎実験ができ,新たな知見も得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,SYBR Green I以外の標識物質を探索する.そのために,CARD-FISHによるチラミド標識など,市販されている様々な標識物質を大腸菌に適用し,走査型透過X線顕微鏡での検出を試みる.
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