研究課題/領域番号 |
21K18660
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
黒澤 耕介 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 上席研究員 (80616433)
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研究分担者 |
佐藤 雅彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (50723277)
新原 隆史 岡山理科大学, 基礎理学科, 准教授 (20733679)
富岡 尚敬 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30335418)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 天体衝突 / 衝突爆心地 / 衝撃回収 / 粉体 / 高速度衝突実験 / 二段式軽ガス銃 / 岩石組織観察 / 衝突物理 |
研究実績の概要 |
宇宙科学研究所 超高速衝突実験施設にて種々の粉体試料に対して衝突速度, 弾丸材質を変化させた高速度衝突実験を実施した(黒澤, 佐藤, 新原, 富岡). 本研究課題の申請段階では密度が大きい粉体試料を使用したときのみ衝突点近傍の試料が「おわん形状組織」として「凍結」されることがわかっていた. その後の系統的な実験により, 通常の砂であってもおわん形状組織を回収し, 詳細分析を実施可能であることがわかってきた. これは惑星科学応用を検討する上で重要である. 従来用いていたジルコンビーズは工業製品であり, その製法から天然には存在し得ない結晶構造をしていることは明らかであった. このような物質を用いた実験では最終的に研究成果を論文にまとめる際に潜在的問題となることは明らかであった. 2021年度の実験により隕石に含まれているような鉱物を主体とする砂でもおわん形状組織を回収できることが明らかになり, 惑星科学上重要な造岩鉱物が衝突直下点で経験する変成を明らかにする目処がたったことになる. 長石砂を標的として行った実験で回収したおわん形状組織を電子顕微鏡で観察したところ, 秒速3 kmほどの衝突速度においても熔融したような組織が形成されていることを確かめた. 理想媒体を想定した衝突物理学計算では長石はこの程度の衝突速度で発生する熱では熔融し得ないことから実在物質中では従来想定していなかった局所的なエネルギー集中が起きることが明らかとなった. 典型的な造岩鉱物から作成したおわん形状組織はそのような過程を凍結した媒体として期待できることを改めて確かめることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおりに宇宙科学研究所 超高速衝突実験施設のマシンタイムを獲得し, 実験を進めることができた. 当初は衝突爆心地におわん形状組織が残ることが既知であるジルコンビーズを使用し, その中に「追跡粒子」となる造岩鉱物を混ぜ, その衝撃変成を観察予定であった. しかし, 「研究実績の概要」に記したようにジルコンビーズは工業的に作成された天然には存在しない物質であることが弱点であった. 2021年度の実験で衝突条件を適切に設定すればありふれた造岩鉱物から成る砂でもおわん形状組織を回収可能であることが明らかとなり, 粉体標的の構成粒子自体の変成を調べることができる目処がついた. このような予備実験のために研究計画には遅れが生じているものの, 研究成果を論文としてまとめる際の弱点を事前に潰すことができたので, (2) おおむね順調に進展している。の判定とした.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度も宇宙科学研究所 超高速衝突実験施設の共同利用研究課題として採択され, 実験を進める準備はできている. 2022度は長石砂を用いておわん形状組織の回収を複数回実施する. 回収試料を光学顕微鏡観察(黒澤, 新原), 電子顕微鏡観察(黒澤, 新原), 電子線マイクロプローブによる元素分析(新原), 透過型電子顕微鏡を用いた微細組織観察(富岡), 超伝導量子干渉磁力計による残留磁化計測(佐藤)し, 試料が経験した温度, 圧力の空間分布を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者(新原)の所属期間の異動に伴い, 執行に遅れ, 次年度使用が生じた. 繰り越した分担金は実験に必要な物品類の購入, 及び共同実験, 共同分析, 学会発表の旅費などに使用する予定である.
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