研究課題/領域番号 |
21K18670
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
新田 勇 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30159082)
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研究分担者 |
月山 陽介 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00533639)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | ゴム摩擦 / 真実接触面積 / メニスカス / 凝着 / 広視野レーザ顕微鏡 / 水 / 非架橋部 |
研究実績の概要 |
ゴムは柔らかく摩擦係数も2~3と他の材料に比べて高いので,種々の物体搬送に使われる有用な材料である.ナノ領域では摩擦力の要因が解明されているが,靴底などマクロ領域では接触状況が複雑で摩擦力が予測できない.それは,ゴムの架橋状況に応じて変わるメニスカス力がマクロ領域において評価できないからである.応募者は,自身が開発した広視野レーザ顕微鏡によりマクロ領域のゴム表面全体の真実接触面積Arを精度良く測定することに初めて成功した.この独自の計測手法をゴム摩擦力予測に適用すれば,未解決だったメニスカス力の問題を解明できる.そこで,本研究の目的は,個々のArをメニスカス力測定のセンサーとして使用し,マクロな観点からの新規メニスカス力可視化手法を開発することである. 昨年度は,接触面が5mm四方の天然あめゴム試験片とスライドガラスの接触において真実接触面積の時間変化を調べた.垂直荷重は100gfとした.乾燥状態において,真実接触面積は徐々に増加して120分経過では見かけの接触面積の5%になった.これに対応する摩擦係数は3~4でほぼ一定であった.接触界面に水を介在させると,接触開始から30分までは真実接触面積は1%程度であるが,それ以降時間の経過と共に増加し最終的に95%となった.これに対応する摩擦係数は,30分までは1程度で60分以降は5.5程度になった.接触界面に水が存在しても,乾燥中よりも摩擦係数は大きくなった.これはメニスカス力が有効に作用したためである.水の代わりにエタノールを介在支えた場合は,接触初期より真実接触面積は90%程度の値となった.摩擦係数は接触時間内でほぼ4.5程度の値を保った.接触終了後のスライドガラス表面にはゴムから移着した油膜が形成されていた.油膜厚さは乾燥中よりも水介在の方が厚めであった.このように,メニスカスが摩擦に及ぼす影響を明瞭に捉えることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,マクロ領域においてメニスカスが摩擦に及ぼす影響を調べることである.従来の研究は,ミクロ突起1個においてメニスカスの影響を調べて,それらを見かけの接触面積に亘り積算することで,マクロ領域のミニスカ特性が論じられていた.今回の研究において,マクロ領域ではミクロ突起以外の領域もメニスカス力が作用することが明確になり,従来の考え方ではマクロ領域のメニスカス特性は捉えられないことが明確になった.よって,研究計画の第一段階は予定取り遂行できたものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
今回,真実接触面積はレーザ光の干渉を用いて計測している.真実接触部は0次干渉で黒く観察される.しかし,乾燥中では良いにしても,水が介在する場合はメニスカス力により真実接触部以外でもゴムとガラス表面のすきまが数十nm程度に接近することになった.光学解析によると,このような狭いすきまでは0次干渉に近い現象が起きてしまうことがわかった.そこで,新たな手法を開発して,これまでより高精度に真実接触部を検出する方法を開発する. 昨年度の研究では水によるメニスカスが摩擦係数を増加させるには,水を滴下後1時間程度の時間が必要であった.この現象を工業的に利用するには,より短時間でメニスカス力を発現させる必要があることから,ゴムの形状や滴加する水の量を変えることで、より短い時間でメニスカスを形成させる方法を考案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の研究では水によるメニスカスが摩擦係数を増加させるには,水を滴下後1時間程度の時間が必要であった.このようにメニスカス効果発現まで長時間必要であることは予想外であった. この現象を工業的に利用するには,より短時間でメニスカス力を発現させる装置上の工夫が必要がある.そこで,昨年度分と今年度分の予算を合わせて装置を開発する計画とした.
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