ゴム表面の接触については,表面微小突起などのミクロサイズで研究が行われ,垂直力,分子間力(JKR理論),メニスカス力が与える真実接触面積Arへの影響が判明している.しかしこの考えを,靴底全体のマクロ領域に単純に拡張適用できるかは明らかでない.そこで,本研究では従来顕微鏡に比べて400倍視野が広い「広視野レーザ顕微鏡」を使って真実接触面積の分布を明らかにし,これまでは不明であったメニスカス力がマクロ的に摩擦に及ぼす影響を調べることに挑戦する. 試験片は天然あめゴム(5×5mm,厚み2mm,硬さA25)で,その上面にガラス板を接触させた.垂直荷重は1Nで,接触時間を変えながら接触面を観察した.摩擦力の測定では,ゴム試験片の移動速度は0.1 mm/sとした.ゴム試験片は表面が平坦なものほか,研磨砥石で2種類の粗さを与えたものである.実験は空気中のほか,水またはエタノールを界面に介在させた. 平坦ゴム試験片では,真実接触面積Arは見かけの接触面積Aa比で10%未満であった.水を介在させると,接触時間40分からArが上昇し,Ar/Aaは90%以上になった.エタノールの場合は,接触時間10分でAr/Aaは90%以上になった.空気中での摩擦係数は約3.5であったが,水およびエタノール中では,それぞれ5.5と5になった.真実接触面積の増加率およそ9倍に対して摩擦係数の増加率は1.5倍であった.この点が謎として残った. 次に,粗い試験片と細かな試験片を準備して同じような実験を行った.その結果判明したのは,水の介在によりArが接触時間と共に増大するのはメニスカス力によるためである.水が完全に蒸発するとメニスカス力が消失するため,Ar部には引張応力が生じる.このために,摩擦力などの外力が作用するとメニスカス力で増加したArは消失することになり,Arの上昇率と摩擦力のそれは一致しないことになる.
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