• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

透明球状ナノ粒子の選択的還元積層接合を利用した3次元熱ダイオードの作製

研究課題

研究課題/領域番号 21K18671
研究機関長岡技術科学大学

研究代表者

溝尻 瑞枝  長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (70586594)

研究分担者 石川 善恵  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20509129)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2023-03-31
キーワード球状ナノ粒子 / レーザ微細加工 / 接合 / 還元 / 熱ダイオード
研究実績の概要

本研究の目的は,申請者らがこれまでに発見したフェムト秒レーザパルス照射により透明なCu2O球状ナノ粒子が単層でCu薄膜上へ局所接合される新規現象を応用し,Cu2O球状ナノ粒子の局所接合・還元を用いた3次元熱ダイオードを創製することにある.令和3年度は,3次元造形の基礎検討として,直径100nm~1umのCu2O球状ナノ粒子のナノ粒子の各種金属薄膜基板上への接合・還元特性を評価した.直径400 nm以下のCu2O球状ナノ粒子はポリオール法を用いて,直径1um球状ナノ粒子は液中レーザ溶融法にて調製した.ポリオール法による球状ナノ粒子の調製では,各種調製条件を制御し,調製中の粒子を抽出して観察することにより核生成・成長過程を明らかにした.Cu2O球状ナノ粒子サイズの調製時間依存性は小さく,反応温度,PVPの平均分子量,混合量,原料の注入速度に起因することを明らかにした.
更に,基板の金属種類について議論するため,Si基板上に成膜したAu,Cu,Cr薄膜上,比較用にSi基板上にCu2O球状ナノ粒子と還元剤を混合したインクを塗布し,近赤外フェムト秒レーザパルスをインク膜内部へ集光照射した.その結果,低描画速度,低パルスエネルギー条件において,金属薄膜直上の球状粒子のみが接合された.その接合に必要な最小パルスエネルギーは,Au薄膜基板上で最も小さなパルスエネルギーでAu<Cu<Cr<<Siとなった.これは,Cu2O球状ナノ粒子と金属薄膜接点における電場増強に起因していることが明らかとなった.また,この電場分布から入熱流速を求め,レーザ1パルス照射時の温度履歴を熱伝導解析により求めた.その結果,Cu2O球状ナノ粒子と基板との接点の最高到達温度は,Au,Cu,Cr,Siの順に大きくなった.このことから,Cu2O球状ナノ粒子と基板との接合は接点の局所加熱によるものと考えられる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では,Cu2O球状ナノ粒子の金属薄膜上への接合メカニズムの解明と3次元選択還元積層を実現し,3次元熱ダイオード創製への応用を目的とする.令和3年度はCu2O球状ナノ粒子の選択的還元・接合現象の解明と3次元選択還元積層条件の検討のため,下記2点に取り組んだ.
(1) Cu2O球状ナノ粒子のサイズ効果の検討 単分散Cu2O球状ナノ粒子サイズを100nm~1umに調整し,Au,Cu,Cr薄膜上への接合状態を評価した.熱影響の局所接合・還元への寄与を明らかにするため,近赤外フェムト秒レーザパルス照射による接合現象を単層,多層,溶融に区分し,レーザ照射条件と接合状態を明らかにした.その結果,低照射速度,低パルスエネルギーで,単層接合が行われ,Cu2O球状ナノ粒子直径が大きいほど,単層接合が行われることが分かった.単層接合に必要な最小パルスエネルギーは,Au薄膜基板上で最も小さなパルスエネルギーでAu<Cu<Cr<<Siとなった.また,接合断面を割断し,FE-SEM/EDS観察したところ,Cu2O球状ナノ粒子は元の形状を保持し,接合部のみで変形が生じていることが分かった.また,接合箇所近傍では,酸素濃度の低下がみられた.
(2) 電場増強とCu2O球状ナノ粒子と金属薄膜の接合状態の関連性の検討
実験的に明らかにした局所接合・還元と照射レーザパルス強度の関係を定量評価した.電磁場解析により各種薄膜基板とCu2O球状ナノ粒子の接点の電場強度を見積り,単層接合は電場増強に起因していることを明らにした.また,電場分布から入熱流速を求め,レーザ1パルス照射時の温度履歴を熱伝導解析により求めた.その結果,Cu2O球状ナノ粒子と基板との接点の最高到達温度は,Au,Cu,Cr,Siの順に大きくなった.このことから,Cu2O球状ナノ粒子と基板との接合は接点の局所加熱によるものと考えられる.これらの知見から,Cu2O球状ナノ粒子の接合条件が明らかとなった.

今後の研究の推進方策

本研究では,Cu2O球状ナノ粒子の金属薄膜上への接合メカニズムの解明と3次元選択還元積層を実現し,3次元熱ダイオード創製への応用を目的とする.
令和4年度は,令和3年度に明らかにしたCu2O球状ナノ粒子の選択的還元・接合現象の探索結果を基に,Cu/Cu2O球状ナノ粒子積層3次元熱ダイオードの特性評価と熱電発電応用に取り組む.具体的には下記2点について検討する.
(1) Cu/Cu2O球状ナノ粒子積層3次元熱ダイオードの試作
Cu-Cu2O球状ナノ粒子接合による熱ダイオード特性を評価する.具体的には,リソグラフィにて作製したCu-Ni系薄膜熱電対を用いた温度計測により,2次元Cu/Cu2O球状ナノ粒子配置による熱整流作用を評価する.その知見をもとに3次元熱ダイオードを試作し,特性を評価する.
(2) 薄膜熱電発電への応用
薄膜熱電発電デバイス上に,3次元熱ダイオードを作製し,熱電発電応用を検討する.熱電発電には高い熱電能を示すBi-Te系と,微細化が可能なCu-Ni系薄膜を用い,3次元熱ダイオードと一体化する.

次年度使用額が生じた理由

納品に時間がかかる消耗品があり,次年度の購入に変更としたため.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Bonding of single-layered Cu2O nanospheres on Cu substrates in irradiating near-infrared femtosecond laser pulses2022

    • 著者名/発表者名
      Shohei Murayama, Kien Vu Trung Nguyen, Masateru Anzai, Hideyuki Magara, Takahiro Nakamura and Mizue Mizoshiri
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.35848/1347-4065/ac54f1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] フェムト秒レーザーパルス照射によるCu2O微小球の局所加熱還元接合2022

    • 著者名/発表者名
      溝尻 瑞枝,村山 章平,NGUYEN VU TRUNG KIEN,安西 将輝,真柄 英之,中村 貴宏
    • 学会等名
      レーザー学会学術講演会第42回年次大会
  • [学会発表] 3次元Cu微細造形に向けたCu2O球状ナノ粒子のフェムト秒レーザパルス誘起局所加熱接合"2022

    • 著者名/発表者名
      溝尻 瑞枝
    • 学会等名
      第96回レーザ加工学会講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] フェムト秒レーザパルス照射による多分散Cu2O球状ナノ粒子のCu薄膜上への還元接合2022

    • 著者名/発表者名
      安西 将輝,村山 章平,真柄 英之,中村 貴宏,溝尻 瑞枝
    • 学会等名
      日本機械学会北陸信越支部2022年合同講演会
  • [学会発表] 3D微細造形のためのCu薄膜上へのCu2O微小球還元接合特性評価2021

    • 著者名/発表者名
      NGUYEN VU TRUNG KIEN,村山 章平, 安西 将輝,真柄 英之,中村 貴宏,溝尻 瑞枝
    • 学会等名
      第12回「マイクロ・ナノ工学シンポジウム」
  • [学会発表] Consideration of the mechanism of single-layered Cu2O nanospheres bonded on metal substrates in irradiating near-infrared femtosecond laser pulses2021

    • 著者名/発表者名
      Shohei Murayama, Kien Vu Trung Nguyen, Masateru Anzai, Hideyuki Magara, Takahiro Nakamura, Mizue Mizoshiri
    • 学会等名
      34tht International Microprocesses and Nanotechnology Conference (MNC2021)
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi