研究課題/領域番号 |
21K18673
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
嶋田 隆広 京都大学, 工学研究科, 教授 (20534259)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 多孔質メタマテリアル / 複合物理特性 / ナノ強誘電体 / Phase-Field法 / 第一原理解析 |
研究実績の概要 |
ナノ強誘電(圧電)材料は、外場(力場・電場)と相互に作用する物性(圧電性やP-Eヒステリシス応答)を有しており、電気機械・エネルギー・情報技術を支える基幹となっている。このような優れた性質は、材料内部に直線的な強誘電分極によって構成されたドメインを内包することに起因する。近年では、従来の直線的な分極とは全く異なる多重渦状などのトポロジカルな強誘電分極が多孔質構造を有するメタマテリアル中に発現することが明らかにされつつある。本研究では、多孔質メタマテリアルに発現するトポロジカル強誘電分極と発現機構を解明することを目的とする。 本年度は、多孔質メタマテリアル中の強誘電分極分布を解析するため、大規模Phase-field解析プログラムの開発を行った。従来の有限要素法を基礎としたPhase-Field解析では要素数の2~3乗に比例して計算負荷が急増するため、大規模モデルの解析は困難であったが、本研究で開発したFourier Spectral法を基礎としたPhase-FieldプログラムによりNlogNに比例する負荷まで軽減することができた。 この大規模Phase-field解析プログラムを用いて、多孔質メタマテリアル中の強誘電分極秩序とそのトポロジカル特性を解析的に評価した。直線的要素によって構成されるアルキメデス格子状のメタマテリアル、球状ボイドが配列された多孔質構造材、近年の作製技術革新により可能になったジャイロイド構造について解析を行い、その強誘電分極パターンを評価した。いずれもミクロな構造に依存した位相幾何学的パターンが発現しており、その構造-機能相関について検討を行った。特に、ジャイロイド構造では、右手系らせんと左手系らせんが織りなす複合カイラル分極パターンが得られており、新たなメモリ素子などへの応用が期待される結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度実施予定の計画は、(1)多孔質メタマテリアル中の強誘電分極大規模解析方法と数値計算システムの構築、(2)多孔質メタマテリアルのトポロジカル強誘電分極秩序の解明、である。研究実施要領に記載のとおり、2項目について実施し、成果が得られていることから、研究は順調に進展しているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画に記載のとおり、(3)トポロジカル強誘電分極秩序の発現機構の解明、(4)複合物理特性の評価・解明、(5)複合物理モデルの構築と力学設計指針・将来展望、を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算結果データの効率処理により、当初の予定していたものより保存データの総容量が少なく、ストレージ機器が小規模に抑えられた。一方、次年度はより大規模な解析モデルを扱うことから、本年度よりも解析データが膨大になる予定であり、次年度実装する計算機器のシステム拡充に充てる予定である。
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