研究課題/領域番号 |
21K18681
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
閻 紀旺 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40323042)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | レーザ照射 / ナノ粒子 / ナノファイバー / シリコン / カーボン / 複合粒子 / リチウムイオン電池 / 負極材料 |
研究実績の概要 |
電気自動車やスマートハウスの普及に伴い,リチウムイオン電池の高容量化が求められている.従来の炭素電極の代わりに高容量化の見込めるシリコン負極の研究が進められているが,シリコン負極は充電時に体積膨張が生じるため,充放電を繰り返すとシリコン膜が崩壊する問題がある.本研究では,半導体産業から大量に排出させるシリコンスラッジに適量な炭素粉末を混合させ,高出力レーザを照射することによりシリコンと炭素からなる複合ナノワイヤを生成させ,集電体である銅箔表面へ堆積させる.これにより高性能な負極を創製し,シリコン負極の諸問題を解決する. 本研究の目標を達成するために,まずレーザ照射による銅箔へのナノワイヤ堆積装置を構築する.そして,異なる重量比でSiスラッジとC粉末を混合させ,ターゲット試料を作成し,レーザ出力やパルス幅,パルス周波数,スキャン速度などを変化させて照射実験を行う.銅箔表面への複合ナノワイヤの堆積形態を観察し,ワイヤ形状や結晶構造,化学組成そして電気抵抗を評価する.R3年度において次の項目について研究を行った.(1)レーザ照射装置の構築:高出力レーザ発振器から出力されるレーザビームを光学系によりターゲット表面へスキャン照射できるように実験装置を構築した.(2)Siスラッジ/炭素粉末の混合・分散方法の検討:様々な割合で炭素粉末をSiスラッジへ混入し分散させる.高品質の複合膜を得るには2種類の微粒子の均一分散が非常に重要であり,粉体ミキサを用いて攪拌方法や分散条件の最適化を行った.(3)ナノ構造体形成実験:異なる割合で混合したSiスラッジ/炭素粉末の混合物のレーザ照射による成膜実験を行う.生成された複合粒子やナノワイヤの表面・断面性状を走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡などなどを用いて観察した.また,照射条件による影響を調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標を達成するために,まずレーザ照射による銅箔へのナノワイヤ堆積装置を構築する必要があった.R3年度において,高出力レーザ発振器から出力されるレーザビームを光学系によりターゲット表面へスキャン照射できるように実験装置を構築した.また,複合膜を得るには2種類の微粒子の均一分散が非常に重要であり,本研究ではSiスラッジ/炭素粉末の混合・分散方法を検討することによって適切な分散条件を見出した.上記ステップによってレーザ照射による成膜実験を行うことができるようになった.さらに,生成された複合粒子やナノワイヤを走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡などなどを用いた分析も行うことができるようになり,本研究をほぼ予定通りに前進させた.
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今後の研究の推進方策 |
今後,異なる重量比でSiスラッジとC粉末を混合させ,ターゲット試料を作成し,レーザ出力やパルス幅,パルス周波数,スキャン速度などを変化させて照射実験を行う.銅箔表面への複合ナノ粒子やナノワイヤの堆積形態を観察し,ナノ構造体の形状や結晶構造,化学組成そして電気抵抗を評価する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により,レーザ装置用ガス供給装置の納入と設置工事が遅れて2021年度内に導入できなかった.また,国際会議発表の旅費も,学会がオンライン開催となったため使用しなかった.以上より,2021年度では大きな残額を生じた.2022年度では,早い時期にレーザ装置用ガス供給装置の納入と設置工事を実施予定であり,また国際会議も対面参加になったら積極的に参加する予定であるため,資金の全額を使用できると考えられる.
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