タンパク質や生体保護物質の溶媒である水は,タンパク質の保存・安定性を大きく左右し,タンパク質の劣化を支配することが知られている.本研究では,劣化反応の緩和時間と1対1の関係にある水分子の回転緩和時間を支配する現象を明らかにすることで,これを制御しうる保護物質の物性を調べることを目指した.リゾチームと複数の糖類の水溶液について,誘電分光や分子動力学計算より水分子の誘電緩和時間(回転緩和時間)を求め,水分子の回転緩和時間は,1)水和殻内の電場の回転緩和時間,2)一つの溶質分子の水和殻内にある水分子の平均的滞留時間,3)水和殻の体積分率の3点を,溶質濃度や溶質の特性で制御すればよいことがわかった.
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