研究課題/領域番号 |
21K18689
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩井 裕 京都大学, 工学研究科, 教授 (00314229)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 改質 / 混合燃料 / 固体酸化物形燃料電池 / 燃料極 / 実験 |
研究実績の概要 |
初年度であるR3年度は、まず検討対象の触媒を自作した。固体酸化物形燃料電池の燃料極として一般的なNi-YSZ(イットリア安定化ジルコニア)およびNi-GDC(ガドリニア添加セリア)を材料とし、直径2㎝程度の多孔質体をそれぞれ焼成したのちに粉砕し、250~500ミクロンの粒子径の触媒を得た。さらに、酸化物イオン伝導性をたないため燃料極としての使用はできないが、触媒担体として採用されることの多いアルミナを用いたNi-アルミナ触媒も同様に作製した。作製した多孔質触媒のSEM画像を解析し、Ni、酸化物(担体)、空隙の各相の体積分率、表面積、接触面積などの特徴量を定量化した。3種の触媒について水蒸気吸着試験を行い、担体の表面積当たりの水蒸気吸着性能がアルミナ、GDC、YSZの順に高いことを明らかにした。次に、現有の充填型触媒反応試験装置を用いてそれぞれの触媒に対して反応実験を実施した。まずはメタンとアンモニアの混合はせず、メタン水蒸気改質反応と、アンモニア分解反応のそれぞれの反応特性に注目した。内径7mmの石英管に触媒を少量充填し、電気炉で加熱することで反応部の温度を600~750℃の範囲で制御した。供給ガス組成と温度を変更し、排出ガスの組成をガスクロマトグラフで測定した。加湿メタンを供給した実験の結果、設定した条件範囲内では、担体の種類がメタン改質率に与える影響は小さいことを明らかにした。次に、同じ実験装置を用いて、アンモニア分解反応の実験を行った。アンモニアあるいはアンモニアと水蒸気の混合気を供給したところ、アンモニア分解反応特性は担体の種類が影響を与え、供給ガス組成と温度が同じ条件であれば、アルミナ、GDC、YSZの順に分解率が高いことを明らかにした。またいずれの条件でも、供給ガスに水蒸気が含まれるとそれがない場合に比してアンモニア分解率が低下することも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画の通り、酸化物担体の異なる3種類の多孔質触媒を自作し、その多孔質微構造の画像解析から構造の特徴量を定量化した。現有の触媒充填型の反応試験装置を用いて、作製した試料のメタン水蒸気改質反応およびアンモニア分解反応の基礎特性を得た。また水蒸気吸着試験により水蒸気吸着性能が担体により異なる結果を得るなど、計画に沿い順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現有の充填型触媒反応試験装置を用いて反応特性を評価しているが、ガス供給系のマスフロ―コントローラのいくつかが老朽化しており、そのことが測定精度に若干の影響を与えている。本来、R3年度中に新規購入して更新する予定であったが、世界的な半導体供給不足の影響を受けR4年度に持ち越した。早急に装置を更新し、一部の試験条件につい再測定を行い検証を行う。そのうえで、メタンとアンモニアを混合供給した場合の改質・分解反応の基礎データをそれぞれの触媒担体の場合について蓄積する。またテストセクションに充填する触媒量を増やし、触媒充填部の上流側と下流側で局所ガス組成が有意に異なる状態を実現させた場合の、流れ方向の温度分布を赤外線画像装置をもちいて計測する。並行して、メタン水蒸気改質反応とアンモニア分解反応のそれぞれについて、反応モデルの構築を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
マスフロ―コントローラなど更新予定であった装置が、世界的な半導体の供給不足の影響で品薄となったため。当該年度の実験は現有の装置で対応できたが、劣化による精度の低下が見られるため、次年度にはできるだけ早急に更新する予定である。
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