研究課題
本研究は,物質のスケールや状態に依存しない熱伝導特性の一般的な記述を考えることを目的として,物質を原子・分子にまで分解し,周波数分解した熱流に対する二つの粒子間の伝導特性を記述する関数を求めて,それを用いて注目する系全体または局所の有効熱伝導特性を表現することを考えている.そのために,本年度は以下の研究項目を実施した.(1)固体・液体およびその界面を含む分子モデル系における局所的な界面熱抵抗の算出と振動特性の関係の評価: 液体-固体界面を含む分子モデル系の熱伝導状態をシミュレートできる分子動力学プログラムを用いて,界面の微細構造ならびに流体分子-固体原子間の相互作用強さが1原子あたりまたは微細領域の局所界面熱抵抗に与える影響を明らかにするとともに,流体分子と固体原子の周波数に依存した局所振動特性の変化を調べた.その結果,1原子あたりまたは局所領域の界面熱抵抗は,その局所界面に隣接する流体分子と固体原子のそれぞれの振動特性分布の重複面積と相関があることが分かった.(2)固液界面全体の熱抵抗と局所界面熱抵抗の関係の解明:1原子あたりまたは局所領域の界面熱抵抗に対して並列熱回路を用いて計算した界面全体の熱抵抗は,ナノ構造が存在する界面において濡れがよい場合には,界面全体の界面熱抵抗とよい一致を示すことが分かった.(3)固液界面ならびに液体領域における局所的な熱流スペクトルおよび周波数に依存した局所界面コンダクタンスの評価: 周波数に依存した熱流スペクトルおよび局所界面コンダクタンスについて,その算出を行った.周波数に依存した局所界面熱コンダクタンスおよび液体領域の局所熱コンダクタンスは定性的に妥当に算出できたと考えられるが,液体領域の局所熱コンダクタンスの値については定量的にさらなる検討が必要であることが分かった.
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Numerical Heat Transfer, Part A: Applications
ページ: 1~14
10.1080/10407782.2023.2300355