揺動散逸定理に代表される「ゆらぎの統計」の研究は少なくない。Landau やPrigogineらは、局所平衡を天下りに仮定するゆらぎの流体力学を提唱した。しかしながら、どのような時空間スケールのゆらぎが、どのような根拠をもって、局所平衡の仮定と両立するのかについては、十分な議論はなされていない。本研究は、このような観点に立って、ある時刻にある位置に現れた変動成分が、次の時刻に何処でどのように振る舞うのかを分子レベルから議論するための理論的枠組みを、分子動力学に基礎づけられた「ゆらぎの流体力学」と名付けて、これを創成するための基礎的ではあるが萌芽的かつ挑戦的な課題に取り組むことを目的とする。
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