研究課題/領域番号 |
21K18705
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
枦 修一郎 東北学院大学, 工学部, 教授 (90324285)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 環境発電 / 磁気相転移 / 熱誘起 / 電磁誘導 |
研究実績の概要 |
鉄(Fe)とロジウム(Rh)の原子濃度比が1:1となるFeRh合金のバルク体の作製を行った。さらに合金作製後にその結晶構造のCsCl型の規則配列化を行うため熱処理を試みた。熱処理条件は先行研究の結果より、真空雰囲気中で熱処理温度が1000℃~1200℃の範囲、24時間以上の熱処理条件にて、ほぼ完全な規則合金が得られるとの条件を参考にした。但し、保有する熱処理装置の仕様のため、上限が1000℃で且つ数時間以上の連続熱処理が困難なことから、数回の熱処理を繰り返すことで参考条件と同等になるよう熱処理を施した。熱処理後に磁化の温度変化を振動試料型磁力計(VSM)で測定したところ、所望していた急峻な磁化変化は見られず規則化が不完全と思われる緩慢な特性であった。一方、昨年度にバルク体作製及び評価に向けた参考のために検討した(過去に作製し保有していた)薄膜試料について、ガラス基板から一部を引き剥がすことに成功したため、同様に磁化の温度特性を測定したところ、バルク体の参考文献で報告されているような非常に急峻な1次磁気相転移特性が得られた。十分に規則化したFeRh合金は、1次相転移の前後で約1%の体積変化を示すことが知られており、基板上に形成された状態では相転移時の体積変化が基板からストレスを受けるため、急激な体積変化が抑制されるため、結果として緩慢な変化につながっていることが明らかとなった。これらより、少なくとも24時間程度の連続熱処理ができるよう熱処理炉を改良し、バルク体の結晶構造の完全な規則化を実現する必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に引き続き、新型コロナ感染症の世界的な拡大の影響による貴金属元素の主要産出国での操業の停滞に加えて、リモートワーク用電子機器需要の拡大による半導体不足の影響もあり、磁気相転移材を構成する貴金属元素であるRh(ロジウム)が電子材料としても広く使用されることから、価格が高騰したままの状態を推移しており、昨年度の不足分も考慮すると入手が困難であった。よって、2021年度に入手した少量でしか合金作製ができず、サンプル数が少ないことから限定的な範囲での評価しか遂行できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度末になり、新型コロナ感染症終息の兆しが見え始めた頃からRhの価格が下がり始め、現在では当初の必要量を確保できる見通しとなったことから、Rhの必要量を早急に確保し、所望の原子濃度比の合金母材の作製を行い、期間延長年度内での当初の研究計画の迅速な遂行を目指す。 試料サイズ(断面積が1平方mm、長さ十mm程度の棒状)に切り出し、良好な1磁気相転移特性を示すよう、熱処理装置を改良して高温長時間の熱処理を施しCsCl規則型結晶構造へ変化させる。熱処理前後における結晶構造の変化を確認するためX線回折装置で評価を行い、結晶構造の十分な規則化がなされているかを判断する。不十分な場合、再度熱処理を施す。十分な規則化がなされた試料については、初年度に導入した振動試料型磁力計の温度特性測定用オプションを用いて、温度変化に対する磁化量の変化を測定し、温度上昇時と下降時の1次磁気相転移温度およびその差である温度ヒステリシス、また変化の急峻性を評価する。 規則構造化した合金棒状試料について、強磁性相への相転移時に合金試料の磁化を飽和させるのに必要十分なバイアス磁界強度については、過去に作製し保有していた薄膜試料の相転移特性を改めて測定した結果から形状の効果を考慮して事前に見積もっておくことで、所望の磁界強度が印加可能なバイアス用永久磁石の材質や構造について検討する。 合金試料に施す巻線の仕様など、発電デバイスとしての最適な構造について検討するとともに、効率よく加熱または冷却ができるような補助機構について検討する。1本の棒状試料から成る発電デバイス単体における加熱及び冷却時の発電性能を評価し、発電デバイス構造最適化の検討を行う。またバイアス磁界を低減(磁石の小型化)可能な閉磁路構造や発生電力を向上させる構造の最適化、また複数個を組み合わせたデバイスのアレイ化について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で作製する合金の主要構成元素であるRhの継続的な価格高騰のため、必要量の入手が困難であり、2021年度に引き続き実験および予算計画を見直した結果、生じた次年度使用である。 2022年度末頃からRhの価格が下がり始め、現在では当初の研究計画で必要としていた量を入手できる見込みとなったことから、研究遂行に必要十分なRhを購入する。また、熱処理装置の改良が必要なことが明らかとなったことから、高温長時間の熱処理が可能な仕様への改良費として支出する。
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