本研究は、液晶中で自己組織化により形成される高分子ネットワークの二次元凝集構造が光重合に用いる紫外光源の配光分布に依存することに着目し、微細構造を用いて紫外光源の二次元配光分布と照度分布を制御することで、液晶中に高分子の連続層構造を液晶中に形成する技術の確立、形成された高分子構造間の微小領域における液晶の分子配向制御を確立することで新たな光制御技術を構築し、焦点可変の拡張現実グラスに応用することで、液晶・高分子複合材料の新たな応用を開拓することを目的とし以下の成果を得た。 1.液晶中に1ミクロン幅の微細な高分子凝集構造を形成する手法を確立した。液晶素子の基板上にフォトリソグラフィによる微細構造を形成し、その構造と配置を制御することで任意の構造が形成できることを確認した。また、液晶・モノマー混合材料に照射する紫外線の照度、時間を最適化することで駆動電圧の低減が可能であり、液晶の電圧応答性を改善できることを確認した。 2.低分子液晶の配向状態に捻じれを導入すると共に、方解石を用いて作製した複屈折板を組み合わせることで焦点距離を電気的に制御できる焦点可変光学系を提案した。 3.提案光学系の試作と評価を行い、画像の結像位置を130cmから210cmまで高画質でかつ高速に制御できることを確認し、提案光学系の有効性を確認した。 以上、本研究では、紫外線の配光を制御することで液晶材料中の高分子の凝集分布を制御すると共に、微小空間における液晶の配光制御を通じて、小型で、高速かつ高画質に画像の毛結像位置を制御する光学系を考案し、その有効性を確認した。本研究の成果は、今後、空間の様々な位置に画像を結像する次世代の拡張現実メガネの実現に大きく貢献するものと考えられる。
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