研究課題/領域番号 |
21K18708
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
明連 広昭 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20219827)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | トポロジカル量子ビット / 組紐操作 / 単一磁束量子論理回路 / 量子操作 |
研究実績の概要 |
3次元トポロジカル絶縁体にs波超伝導体であるNbを近接させてトポロジカル超伝導体を実現し、そのトポロジカル超伝導ジョセフソン素子を三角格子や正方格子にアレイ化することによりトポロジカル量子ビットが掲載可能である。アレイ中には4π周期の磁束と2π周期の磁束が存在し、アニオンであるマヨラナ準粒子(MBS)は2π周期の磁束に束縛されており2π周期の磁束量子の移動に伴ってMBSがアレイ中を移動し、組紐動作が可能となる。2π周期の磁束量子の移動は電流パルスにより可能であることが示され、本研究では単一磁束量子(SFQ)論理回路により発生するSFQにより発生する電流パルスにより組紐操作を実現し、最終的にはトポロジカル量子ビットと古典コンピュータである単一磁束量子論理回路の共存するトポロジカル量子コンピュータの実現への初期的な研究を行うことが目的である。
初年度の2021年度にはSFQに伴う電流パルスによりジョセフソン接合の三角格子と正方格子アレイ中のMBSの組紐操作が可能であることをWRSpiceを用いて実証した。さらに正方格子アレイ中のMBSに対して、2磁束量子発生回路(DFQ Driver)アレイを用いて量子ゲート操作(CNOT操作,Hadamard操作)が可能であることを示し、その研究成果を学会発表し、学術論文誌に投稿中である。また、組紐操作には順回転と逆回転の操作が必要であるが、SFQ論理回路へのバイアス電源の正負を切り替える方式と共に仮想的に負の電流パルスを発生する方法、SFQの入力により正負の電流を生成するバイポーラ電源などの使用方法を考案した。一方、SFQ論理回路の試作・設計に向けて必要となるSFQ論理セルの設計を行い、さらに無冷媒測定環境の構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アニオンであるマヨラナ準粒子は2π周期の磁束に束縛されるため、組紐操作のシミュレーションによる確認は通常のジョセフソン接合とSFQの移動操作で確認可能であった。一方、当初の目的であったWRSpiceへのトポロジカルジョセフソン接合モデルの実装は2022年前半で行い、4π周期のジョセフソン電流成分を含むことの影響を確認する予定である。一方で、三角格子と正方格子アレイにおける組紐操作の基礎的な確認は既に終わり、正方格子アレイのSFQ論理回路による組紐操作に関する基礎的な設計・確認は2021年度に終了した。このため、2022年度ではより大規模な周辺回路の設計や初期状態書き込み手法、最終状態の観測手法の提案が可能となった。さらに、実際のSFQ論理回路や通常のジョセフソン接合を用いた三角格子や正方格子を用いた実証実験を行うための機械式冷凍機による測定環境の構築は2022年度半ばに終了する予定である。
以上より、当初の研究計画より進んでいる研究内容と多少遅れている研究内容があるが、全体としては計画通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年前半にWRSpiceへのトポロジカルジョセフソン接合モデルの実装を行い、4π周期のジョセフソン電流成分を含むことの組紐操作に対する影響を確認する。トポロジカルジョセフソン接合の正方格子アレイに結合するバイポーラ電源アレイの構成方法の検討と小規模化・省電力化の検討を当初の計画に含めて行う。さらに、4Kに実装されるSFQ論理回路への組紐操作手順の記憶方法等の検討を行う。これらの組紐操作に関する研究に含めて、トポロジカル量子ビットの初期化手法と最終状態の観測方法(観測結果をSFQ論理回路で読み出す方法)についての提案を行う。
試作環境については、国内のファウンドリサービスに加えて、海外(米国、ヨーロッパ)のファウンドリーサービスの利用も今後検討し、設計結果の実証を確実に行えるようにして研究を推進する。特に、バイポーラ電源アレイはmK環境下での動作が必要であり、それに付随するSFQ論理回路も同じ温度環境での動作が必要で抵抗を構成する金属材料の新たな選択が必要となる。
測定環境の構築は、機械式冷凍機による測定環境を2022年の半ばを目途に完成し最初の測定を2022年度中に行う予定である。最終年度に向けては、実際のトポロジカルジョセフソン接合アレイとSFQ論理回路を結合して実証実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
単一磁束量子論理回路の試作回数の減少と機械式冷凍機内部の構造設計に時間がかかり2022年度に調達がずれ込んだために次年度使用額が生じた。2022年度中には試作回数の確保と機械式冷凍機の内部構造物の調達を行う。
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