研究課題/領域番号 |
21K18710
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
成瀬 誠 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (20323529)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 光コンピューティング / 光情報処理 |
研究実績の概要 |
光を用いたコンピューティングが活発に研究されるようになったが、その基本機能は「認識」機能に留まっており、最先端のAIで問われている「データ生成」等の高次機能は未踏領域である。研究代表者らは光の物理的特長が高次機能に向けて展開されていないとの問題意識を有し、レーザーカオスを用いた人工データ生成―具体的には顔画像の人工的生成―に世界に先駆けて成功した(Sci Rep 2019)。すなわち従来の光情報処理での「認識機能」を越え、「データ生成」という新たな可能性を切り拓いた。人工データ生成に必須の大量疑似乱数の物理限界の打破に加え、レーザーカオス時系列に固有の時間構造をシグネチャとしたセキュリティ等の新たな機能を提供する。しかし、これまでの実績は、実験で得られた特定のレーザーカオス時系列に基づいており、理論的・系統的な理解や評価指標は確立されていない。本研究を挑戦的研究(萌芽)として実施する目的は、光を用いた人工データ生成という研究領域を、レーザー物理や数理モデルを基礎に学術的に理解し、光と処理系の合成という実装の高度化を含めた大きな今後の大きな研究展開に向けた萌芽的知見を獲得することにある。 研究の二年度目である本年度は、データ生成機能の基盤となる原理として、リザーバーコンピューティングを用いる方法を検討した。リザーバーコンピューティングは対象のダイナミクスをコピーする能力があり、近年、教師情報として与えていないダイナミクスを想起できることが示された(Chaos 2021)。これは一種の人工的データ生成機能と言える。ただし、対象のサンプリング頻度によってはリザーバーコンピューティングが意図通りに機能しないことを見出した。そのためリザーバーコンピューティングにおけるサンプリングの影響を掘り下げて検討した(JKCCS 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
挑戦的研究(萌芽)の二年度目として、データ生成の新しいアプローチに関し、具体的に進捗を図ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討結果を踏まえ、光リザーバーコンピューティングにおけるサンプリング頻度の影響分析を含めた検討をさらに進捗させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本挑戦的研究(萌芽)の二年度目においては、光を用いたデータ生成に関わる新たな原理の設計に向け、リザーバーコンピューティングにおけるサンプリング頻度の影響分析という新たな研究を主体とした。萌芽研究である本研究では、完成度の高いハードウエアや実験はスコープ外であるものの、限られた予算の有効活用のためには、期中に構想された基本原理に関する研究結果を踏まえた、適切な仕様の物品等の導入が不可欠である。当該年度では具体的な実験系の仕様の策定までは至らなかったため、研究全体を意義のある形で進捗させるため、次年度使用とした。次年度使用とした研究費はデータ収録装置の購入等の物品費として使用する計画である。
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