研究課題/領域番号 |
21K18720
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
梶井 博武 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00324814)
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研究分担者 |
近藤 正彦 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90403170)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 有機EL / 強誘電性ポリマー / 交流駆動 / 強誘電性 |
研究実績の概要 |
半導体分野では人の脳の情報処理を模倣するニューロモルフィックシステムの構築が大変注目されている。ソフトではなくデバイスレベルからのシステム構築では、脳内で情報伝達やメモリ機能をつかさどっていると考えられるニューロンとシナプスを人工的な素子に置き換える検討が進められている。 有機電子光デバイスはデバイス自体の柔らかさに加えて、素子作製が低温プロセスであるため、熱に弱いプラスチック基板上に素子を作製することが可能であり、柔らかなデバイスが実現できる。また、電極も含めオール印刷技術で作製した多数の素子を並列に動作させることで大容量の信号処理が可能となる。 本研究の目的は、生体のように柔らかい強誘電性ポリマーからなるキャパシタを内包した絶縁型交流駆動有機ELを印刷技術で作製し、素子の非線形的な電気光学特性の挙動を明らかにすることである。 本年度は、溶液プロセス可能な無機半導体ナノ粒子とフッ化ビニリデン系高分子を用いて、まず強誘電体及び弱い共振器として機能する誘電体ミラーの作製とその電気特性と光学特性の検討を行った。作製した誘電体ミラーが強誘電性を有することを実証し、一定の電圧以上で生じる強誘電体の分極反転特性が、絶縁型交流駆動有機EL素子の発光特性に与える影響を明らかにした。また、単純マトリックス型の並列素子の過渡特性評価に向けて、単一素子での交流駆動の過渡特性評価系に関して検討を行い、絶縁型交流駆動有機EL構造は、従来の直流駆動の有機発光ダイオード(LED)とは異なり、発光特性に非線形性が生じることを見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高屈折率材料である無機銅系正孔輸送材料のcopper(I) thiocyanate, CuSCNと低屈折率材料であるポリフッ化ビニリデン系共重合高分子P(VDF-TrFE)を用いて作製した誘電体ミラーの反射スペクトルの光学特性はシミュレーション結果と一致することを確認した。 三角波ダブルパルス測定により求めた誘電ミラー構造であるITO/[CuSCN/ P(VDF-TrFE)]p/CuSCN/Ag素子(p:ペア数)に対して、電界を印加したときの電気変位量の変化であるD-E特性評価から、強誘電体特有の明確なヒステリシスループを示すことを明らかにした。 このp=1の誘電体ミラー構造体を利用して、溶液プセスにより作製した絶縁型交流駆動有機ELは、弱いマイクロキャビティ効果による電界発光スペクトルの先鋭化を示した。さらに交流駆動の過渡特性評価で、絶縁型交流駆動有機EL構造は、従来の直流駆動の有機発光ダイオード(LED)とは異なり、発光特性に非線形性が生じることを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に課題1,2を主に検討を行ったが、引き続き検討を行い、令和4年度に課題3を主に行うための測定系の構築とデバイス特性評価を行う。 課題1: ニューロモルフック素子応用に向けた高分子キャパシタの強誘電性特性評価 課題2: 上記で作製した強誘電性キャパシタを内包したAC-EL特性評価 課題3: 単純マトリックス型の並列素子による過渡応答特性評価とその応用
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、実験系を構築する光学部品の中で納期が大幅にかかるものがあり、また、講演会が延期開催になったため、次年度に使用することになった。 光学部品は研究遂行に必要不可欠であるが、コロナ禍の影響により価格が上昇する傾向にある。したがって生じた未使用額は、光学部品購入時の経費を補うものとして利用する。また、昨年度はほとんどがオンライン発表のみの参加であったが、昨年度と今年度に研究により得た成果報告を行うため、対面開催で開催される講演会での旅費としても使用する。
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