異方性を生み出す分子配列は、強いキラリティの導入やデバイスの基板界面・外部電界印加の影響により、配向場の不整合(トポロジカル欠陥)を内包する場合が多い。本研究では、従来の液晶デバイスでは有害なもの不要なものと考えられてきた欠陥の配列を空間的に制御することにより、新しい発想の新規光デバイスを開発することを目的として研究を進めた。本年度は、元々トポロジカル欠陥との共存により三次元配向秩序を有するブルー相液晶の格子配列の精密制御を目指して、素子基板表面への配向容易軸の付与とそのパターン化によって格子面ならびに格子軸のマクロな制御を試みた。 隣接する領域の配向容易軸方向が不連続に変化する二次元微細配向パターン上のBPII相液晶の配向挙動を調べた。パターン周期が大きい場合には、(110)格子面が基板に平行で各領域内の[001]軸が配向容易軸に沿った格子配列が得られるが、パターン周期が小さい場合には、弾性ひずみによる配向フラストレーションにより、(100)面が基板に平行で格子方位が配光パターンによらず一様な格子配列が得られることを見出した。また、隣接する領域の配向容易軸方向の差が90度以下の場合には、一様配向格子の格子方位は平均配向容易軸方向から僅か(数度)に偏位した方向に配列し、しかもその偏位方向は液晶分子のキラリティに依存することを見出した。 電界応答挙動に関して、BP液晶に電界を印加すると電歪効果により斜方晶や正方晶が得られ、光学的二軸性が観測されることはすでに知られているが、その電界強度依存性の詳細は明らかになっていなかった。本研究では高秩序のBPⅠ液晶の電界に垂直な複屈折を測定し、格子の大きな歪に起因する電気光学効果を見出した。
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