希土類・遷移金属合金からなるGdFeCo磁性細線において、細線にパルス電流を印加すると磁壁を2000m/sec以上の速度で駆動でき、マルチビット記録磁区列を維持したまま電流方向にシフトすることができた。なお、磁壁駆動にはスピン起電力がブレーキとして作用する。そこで、スピン起電力を調べた結果ブレーキになっていないことを確認できた。また、この磁性細線をレーザーアニールすることで磁壁の電流駆動を高速化、低電流駆動化できることも見出した。さらに、光で高速磁気記録行うための熱分析も行った。このほか熱ナノインプリントにて作成した磁性細線において光記録による熱勾配が創り出す異常ネルンスト効果も確認し、本高速磁壁駆動への影響がないことも確認できた。このように光記録に対する様々な懸念事項を払拭し、高速駆動磁性細線への光パルス照射による高速光磁気記録の原理実験を行った。従来の光磁気記録における磁区の移動速度は数10m/secだったが、本提案では100倍速いのでデータ転送レートも100倍(数Gbps)になる。また、光通信用の光パワーで記録できる媒体構造を検討した。光記録感度を高めるためにSiN誘電体層を用い、かつ高速な磁壁駆動が可能な媒体構造を見出した。更に、従来の光磁気記録では未検討だったジャロシンスキー守谷相互作用(DMI)を利用した記録アシスト効果も検討し、重金属層のPtからのDMIの影響でヘテロ界面付近の磁化に横成分が生じ、その影響で記録感度が大幅に上昇することを見出した。本方式による記録再生実験を行うため、波長1310nmの光通信用半導体レーザー(最小パルス幅40psec)を用意して現在の偏光顕微鏡に組み込み、さらに細線の他端に波長780nmの光磁気信号検出部も組み込んだ。この検出信号強度は高速磁壁駆動している細線上においてリアルタイム再生が確認可能なセットアップとすることができた。
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