研究実績の概要 |
これまでに、活性炭には溶解性2価Mn(以下,Mn)の遊離塩素による酸化を促進する触媒作用があり、その中でも粒径1-2μmの微粉炭を用いると実用が見込めるMn除去性能が得られることを明らかにした。一方で、微粉炭は吸着による臭気や消毒副生成物(以下、DBP)対策に使用されている。そこで、微粉炭によるMn酸化と従来用途である吸着を同時に達成する処理システムを検証した。 かび臭原因物質の2-MIBとGeosminは、それぞれ3mg/Lと1mg/Lの微粉炭により86,88%吸着除去されたが、遊離塩素1mg-Cl2/Lを加えると脱着により除去率はそれぞれ55%と81%に低下した。また、DBP生成能は微粉炭と凝集膜ろ過により17%に抑制されたが、遊離塩素1mg-Cl2/Lを加えると上昇した。これらを踏まえ、Mn酸化と吸着のプロセスを分けるフローを検討した。 フロー1として、微粉炭と遊離塩素を添加して先にMn除去を十分に進行させ、かつ遊離塩素が消費された時点で吸着のために再度微粉炭を添加する方法を検討した。しかし、遊離塩素が消費されるとMn濃度が再上昇することがわかり、フロー2の検討に移った。 フロー2は、微粉炭による吸着後、凝集と簡易沈殿処理を行うことで微粉炭を分離し、越流した上澄水にMn酸化を適用するフローを検討した。なお、簡易沈殿は突発的な高濁対応として膜ろ過の前処理に実装されている。簡易沈殿により脱着の抑制に沈殿は有効であったが、沈殿上澄水に微粉炭と遊離塩素を添加して得られたMn除去速度は、未処理水に添加した場合の1/3程度と小さく、微粉炭が残存したフロックに取り込まれて粗大化したことで除去速度が低下したことが示唆された。フロー2ではMn除去性能が低下するため多くの微粉炭が必要となるが、物理洗浄排水の返送再利用により微粉炭使用量の削減が可能であることが示唆された。
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