研究課題/領域番号 |
21K18740
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
横尾 善之 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (90398503)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 擬河道網 / 実河道網 / エネルギー損失 / 河川密度 |
研究実績の概要 |
本研究は,非平衡熱力学の最新の成果として得られた「エントロピー生成率最大化(Maximum Entropy Production, MEP)原理」を導入することにより,自己組織化された河道網構造における多様性の決定要因を探索し,従来の河川工学の枠を大きく越えた新しい研究の方向性を打ち出すことを目的とする.さらに,樹木や自然界で観察される縞模様や斑模様などの自己組織化構造における多様性の決定要因を「MEP 原理」を応用して探索する.これにより,従来の学術体系を越え,多くの学問分野に応用可能な数理形態学をコアとする新しい学際領域を開拓することを本研究は目指している. 研究初年度の2021年度は,日本の河道網構造が「エントロピー生成率最大化(Maximum Entropy Production: MEP)原理」によって形成されている可能性を検討した.具体的にはまず,標高データから河道発生条件を変えながら河川密度の異なる擬河道網を形成した.「MEP原理によって流域内の雨水が排出された結果として安定的な河道網が形成される」と仮定すると,実河道網で損失する摩擦エネルギーは最小になると考えられる.このため,次に,摩擦エネルギー損失が最小となる擬河道網と実河道網を比較し,両者が似た構造となるか否かについて検討した.その結果,両者には明確な類似性があることが分かった.以上の成果を論文として取りまとめるための準備を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,「世界の河道網の自己組織化構造の多様性の決定要因の探索」に取り組むことを計画していた.世界の河道網は研究対象に加えなかったものの,日本の河道網を対象として研究を進めることができた.また,日本国内の複数の流域地形を解析し,河道網の自己組織化構造の多様性の決定要因として,MEP原理が存在している可能性を見出した.このため,「おおむね順調に進捗している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,2021年度の研究成果を論文として取りまとめつつ,縞・斑などの自然界の模様の発生要因の探索に取り組む.具体的にはまず,反応拡散方程式や反応移流拡散方程式の数値解を求め,自然界に見られる縞模様や斑模様の発生条件を確認する.次に,反応項・移流項・拡散項の影響度に応じて縞模様や斑模様が発生すると仮定し,その影響度のバランスがM E P原理によって説明できる可能性を探索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度である2021年度においてもコロナ禍の影響で,多くの関連学会はオンラインで行われたため,旅費が発生しなかった.また,研究の結果は出たものの,論文として投稿するには至らなかったため,論文投稿に必要な費用が発生しなかった.これらの費用は,翌年度である2022年度の学会参加旅費や論文投稿に必要な英文校閲費や投稿料に充てる予定である.
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