ベトナムの水環境及び下水試料からDNAを抽出し、クラス1インテグロンの相対濃度や遺伝子カセット構造の解析を行った。クラス1インテグロンや薬剤耐性遺伝子を定量PCRで解析したところ、クラス1インテグロンはすべての試料から検出され、この遺伝子構造が広く環境中の細菌群に拡散していることが明らかになった。また、16S rRNA遺伝子に対する相対濃度を比較すると、日本の水環境の結果とほぼ同程度であったが、日本の水環境よりも相対濃度が高い地点も確認された。薬剤耐性遺伝子とクラス1インテグロンとの相関を評価したところ、アミノグリコシド耐性遺伝子などが高い相関係数を示し、クラス1インテグロンが薬剤耐性遺伝子汚染のマーカーとして適していることが確認された。相関係数の高い薬剤耐性遺伝子は、クラス1インテグロンの遺伝子カセットに含まれていることが推測された。クラス1インテグロンの遺伝子カセット領域をPCRで増幅した後、Nanoporeを用いたロングリードシーケンシングにより塩基配列を決定した。遺伝子カセット中には、aadA2(アミノグリコシド耐性)が特に多く含まれており、その他としてはqacH(多剤排出ポンプ)、dfrA1(トリメトプリム耐性)なども検出された。クラス1インテグロン遺伝子カセット中の薬剤耐性遺伝子の組成には日本の水環境との差異が認められ、インテグロンを介した薬剤耐性遺伝子の拡散の傾向には両国で差異があることが推測された。
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