研究課題/領域番号 |
21K18745
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
豊田 浩史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (90272864)
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研究分担者 |
小松 俊哉 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (10234874)
杉本 光隆 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (50196755)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | ガラスビーズ / 膠結作用 / せん断剛性率 / 三軸試験 / 間隙水質 / 土質改良 |
研究実績の概要 |
たまたま発見された実験結果(蒸留水で飽和させたガラスビーズで作製した三軸供試体を,長期間圧密しながら,ベンダーエレメントを用いたせん断波速度 Vs の測定を行った結果,1ヶ月間でガラスビーズのせん断剛性率は約 1.7 倍まで増加した)をもとに申請を行ったが,この結果を実証するために,再度同様の実験を行った.その結果,せん断剛性率が増加しないケースが現れた.分析した結果,ガラスビーズ購入後,初めての使用ケースでそのようなことが起こる可能性が高いことがわかった.原因については不明であるが,ガラスビーズ購入後,水浸1日,その後炉乾燥してから使うことで,せん断剛性率の増加に再現性が出ることがわかった. 三軸試験において,ガラスビーズの基本力学特性を把握する実験を行った.供試体として,相対密度30%のガラスビーズ,相対密度40%の豊浦砂,相対密度60%の豊浦砂を準備した.液状化強度比(繰返し数20回の繰返し応力振幅)は,大きい順に,相対密度30%のガラスビーズ,相対密度60%の豊浦砂,相対密度40%の豊浦砂となった.ガラスビーズに思いのほか液状化強度があり,自己膠結潔作用がなくても,液状化強度の増加が期待できることがわかった.せん断剛性率の大きさに関しても,相対密度30%のガラスビーズ,相対密度60%の豊浦砂,相対密度40%の豊浦砂の順となった.せん断剛性率に関しても,ガラスビーズは大きな値を持ち,地盤材料として問題ないことがわかった.三軸試験装置に空きがなかったため,強度試験に関しては,室内棒貫入試験で代用した.10 mm直径の棒の供試体への30 mm貫入時の抵抗値は,相対密度60%の豊浦砂に対して,相対密度30%のガラスビーズは半分以下の小さい抵抗値となった.粒子間のインターロッキング効果が低いためと考えられ,せん断強度についてはあまり期待できない結果となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
三軸試験におけるガラスビーズの基本力学特性の把握に関しては,次のような成果が得られた.供試体として,相対密度30%のガラスビーズ,相対密度40%の豊浦砂,相対密度60%の豊浦砂を準備した.液状化強度比(繰返し数20回の繰返し応力振幅)は,大きい順に,相対密度30%のガラスビーズ(0.175),相対密度60%の豊浦砂(0.141),相対密度40%の豊浦砂(0.125)となった.ガラスビーズに思いのほか液状化強度があり,自己膠結作用がなくても,液状化強度の増加が期待できることがわかった.せん断剛性率に関しては(有効拘束圧50 kPa),相対密度30%のガラスビーズ(78 MPa),相対密度60%の豊浦砂(70 MPa ),相対密度40%の豊浦砂(62 MPa )の順となった.せん断剛性率も,ガラスビーズは大きな値を持ち,地盤材料として問題ないことがわかった.三軸試験装置に空きがなかったため,強度試験に関しては,室内棒貫入試験で代用した.10 mm直径の棒の供試体への30 mm貫入時の抵抗値は,相対密度60%の豊浦砂が1.18 MPaに対して,相対密度30%のガラスビーズは0.54 MPaとかなり小さい抵抗値となった.粒子間のインターロッキング効果が低いためと考えられ,せん断強度についてはあまり期待できない結果となった. 研究実績の概要でも述べたとおり,時間依存性に関しては,ガラスビーズの下準備(1日水浸後炉乾燥)が必要であることがわかり,思うような成果が出せなかった.しかしながら,基本力学特性の把握試験結果より,どのようなケースにガラスビーズを地盤改良材として利用できるかについて有用な知見が得られたと思う.今後は,ガラスビーズの自己膠結作用特性について研究を進め,ガラスビーズをさらに有効に利用するための基礎知見を得るように努める.
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今後の研究の推進方策 |
1. 力学特性の変化に関する継続時間の影響:ガラスビーズ試料の特殊三軸試験では,せん断剛性率(ベンダーエレメント),微小変形係数(微小局所ひずみ測定),せん断強度(粘着力,内部摩擦角)を計測する.供試体の長期圧密として,3日,1週間,2週間,2ヶ月,4ヶ月を行う予定である.これら力学特性の変化をとらえることで,膠結作用が出ているのか(粘着力の変化),析出物による密度増大によるものなのか(電子顕微鏡撮影)で同定するとともに,力学特性の時間依存性を探究する. 2. ガラスビーズからの析出物の分析:ガラスビーズを蒸留水に長期間浸潤させて,溶け出したイオンをイオンクロマトグラフィーで計測する.検定するイオンとして,カルシウムイオン Ca2+ とナトリウムイオン Na+ を考えている.ガラスビーズを蒸留水に長期浸潤させ,乾燥後,電子顕微鏡で析出物があるか確認する.析出物が認められた場合は,それをX線回折装置にかけ,成分分析を行う.カルサイト等の析出が見られた場合は,その析出過程について,イオンクロマトグラフィーの結果を利用して,考えられる化学反応式について考察する. 3. 液状化対策への利用:地盤にガラスビーズを混入する手法で,液状化対策の実用化が可能であるか検討を行う.将来的には,廃ガラスの処分などへ利用法は拡張できる.当初は,繰返し非排水三軸試験を行い,直接液状化強度増加を計測することを計画していたが,今年度行う内容を考えると,時間的に難しいと考える.したがって,有効なガラスビーズ材料を特定するために,現在使用しているφ0.177~0.250 mm粒径より小さな粒径(φ0.105~0.125 mm)のガラスビーズで自己膠結作用の変化を調べることに変更する.表面積が大きくなる小さな粒径の方が,自己膠結作用が大きいのではないかと考えての選定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より研究の進行が遅れたことと分担者も含め,コロナ禍において出張を控えたことにより,使用額が減ってしまった.17万円ほどであるので,次年度については,研究の遅れを取り戻すべく,今年度できなかった出張によるデータ収集も行うなど,有効に利用する計画を立てている.
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