研究課題/領域番号 |
21K18752
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安福 規之 九州大学, 工学研究院, 教授 (20166523)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 不飽和土 / 水分特性曲線 / 不飽和透水係数 / 不飽和一面せん断強さ / 吸排水履歴とせん断強さ / 連続加圧場 |
研究実績の概要 |
本研究では、不飽和・飽和状態にある土の浸透特性値と強度特性値を連動して評価可能なハイブリッド型のシステムの確立を目指している。具体的には、既に開発している連続加圧型の保水試験装置を活かし、水分特性曲線の吸水排水履歴と連動した不飽和透水係数の算定法を提示し、また、一面せん断試験用の供試体を作製するシステムを試作することを始めている。 これによって、砂質土系供試体の水分特性曲線、不飽和透水係数、せん断強さが連動して得られ、従来の手法と比べて圧倒的な効率化・高精度化を実現可能であると考えている。この目的を達成するために、令和3年度、以下のことを実施した。 1).新たな連続加圧型の保水性試験装置の設計と試作を行った。標準の供試体直径は6㎝で、高さについては、上部の載荷版を工夫することで、2㎝~5㎝の幅で変えられるようにし、供試体高さを変えた条件で保水試験を行えるようにした。このため、マクロテンションメータ(MT)の長さも工夫して設計した。2).一面せん断試験用の3連の不飽和容器の試作を行った。標準の直径は6㎝、高さは2㎝とした。また、容器の下部にはセラミックディスクを装着し、吸排水量が計測できるようにした。さらに、供試体をワンストップで一面せん断装置にセットできるよう補助具を準備した。3).1)と2)を効率的に結び付けるためのシステムブロック図を描いた。4).一面せん断と保水性試験用の供試体の吸排水量を連続的かつ長時間、安定的に計測するための電子天秤の選定とそのシステムブロック図を設計した。5).上記の試作したハイブリッド型のシステムを組み合わせて、水分特性曲線、不飽和透水係数および一面せん断試験用の供試体を効率的に得るためのシステム全体を制御可能な柔軟性のあるプログラムを準備した。6).1)から5)を結び付けて、物理的に一体化させるための実験室内の周辺および設置環境を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、本研究の目的を達成するために、本体部分である連続加圧型の保水試験装置そのものと3連の一面せん断試験用供試体作成セルの設計および試作、実験に必要な計測および制御システムの設計、ならびに、装置本体と計測・制御システム全体の設置環境を整えた。3年間の研究計画の中で考えると、この1年で性能の照査を行える段階になっており、申請者としてはおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については、以下のことを実施することを計画している。 1).まず、これまでに準備した保水性試験装置、一面せん断試験用の供試体の状態把握、保水性試験、不飽和透水係数を算定するためのプログラミング、ならびに一面せん断試験用供試体の作製と状態把握を結び付けたハイブリッド型の制御システム全体の性能の照査を体系的に実施する。2).その結果に基づいて、問題点を整理し、改善方法について検討し、具体化する。その上で、3).保水試験と一面せん断試験用供試体の保水状態に着目して、セルの直径の違いが水分特性曲線、透水係数の算定結果に与える影響を分析し、その特性を明らかにする。また、供試体の高さの影響がどのように結果に現れるのかも実験的に考察する。加えて、4).保水試験装置内の供試体の保水状態と一面せん断試験用供試体のそれがどの程度整合しているかも明らかにする。これらの結果を踏まえ、5).提案するハイブリッドシステムの全体系としての最適化を図る。そして、最終年度の各種土質材料への適用(社会実装)に向けた留意点の整理と技術指針創りの準備を始める。
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