研究課題/領域番号 |
21K18764
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
淺輪 貴史 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (50361796)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 温熱生理 / ウェアラブルセンサ |
研究実績の概要 |
本研究は、人々が屋内や屋外の空間移動を伴う日常生活において、非定常的に感じる暑さや寒さ、涼しさといった温冷感や熱ストレスを、ウェアラブルタイプの皮膚熱流センサを用いて評価する手法を構築することを目的としている。 今年度は、まず、昨年度の研究成果を踏まえ、実用化に向けた検討として、胸部での皮膚熱流量の他に、ウェアラブルセンサで容易に測定ができる手首と指先との温度差に注目して、ウェアラブルセンサによる非定常時(運動および室温のステップ変化時)の温熱生理の取得や温冷感の予測の有効性を検討した。その実験結果より、歩行の開始や停止、室温の上昇や低下のタイミングで指先の温度が高感度で変化し、それが血管の収縮と拡張のタイミングや程度を表していることから、手首と指先との温度差を取ることで、身体の温熱生理状態において重要な血流と、その際の温冷感をよく再現できることを確認した。 昨年度の研究で課題となっていた被験者による温熱生理反応と温冷感の差異に関して、それらの理由として皮膚の断熱を左右する脂肪厚の影響を考察していたが、今年度の実験により、基礎代謝量や筋肉量の差異がより大きく影響している可能性が示された。 また、皮膚の熱流と血流の両者に着目して、身体の局所冷却が温冷感に与える影響を明らかにするために、足裏の局所冷却による足裏熱流と足指の血流の変化を実験により調べ、その際の温冷感反応を確認した。この結果、足指の血流は室温の影響を強く受け足裏の局所冷却の影響は小さかったものの、足裏の熱流は局所冷却により大きく変化し、その結果、身体の温冷感に影響を与えていた。この結果は、熱流と血流を踏まえた温冷感予測において重要な知見を提供するとともに、暑熱環境下で局所冷却により効率的に冷涼感を得るためにも有効な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、挑戦的研究(萌芽)で実施をしているため、今後の展開を踏まえて、幅広い観点で可能性を探りながら実施をしている。その意味で、当初計画をしていた皮膚熱流量に加えて、より簡便な指標としての手首と指先の温度差や、近年簡易に計測が可能となってきた血流量などについても、検討を加えている。 また、身体の局所冷却にも応用できると考え、足裏の局所冷却が身体温熱生理や温冷感に及ぼす影響を検討をしており、重要な知見も得られている。これらの知見については、現在国際ジャーナルに論文を投稿予定であり、十分な進捗であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる次年度において、当初計画では、屋外空間と空調された屋内空間の移動時の温熱生理と温冷感の予測を考えていたが、これまでの研究の進展と、そこで生まれた新たな着眼点を踏まえて、運動量がステップ変化する歩行後における足裏の局所冷却に基づく温熱生理(皮膚熱流と血流)と温冷感の予測に取り組むこととする。これは、身体の温冷感予測とともに、効果的な身体冷却方法の提案と温冷感の向上の効果が期待できるためである。この際に、昨年度の研究で示唆された基礎代謝量や筋肉量の影響も明らかにしてゆきたい。 これらにより、研究の知見や成果を取りまとめるとともに、今後の研究方針を策定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度実施予定であった被験者実験の一部を、次年度に実施することとしたため。
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