本研究は (1) 日本版都市・農村計画 (Town & Country Planning)における、①都市・農村間、②分野間、③主体間による3つの調整メカニズムと、(2)広域的圏域 (City Region)における、①CRの範域の設定方法(計画単位)、②CRが担う公共サービスの選択(計画主題)、③CRの意思決定方法のあり方(計画運用)について、首都圏郊外を対象に、文献資料、ヒアリング、データ分析によって調査を進めた。目的ごとに下記の成果を得た。 (1)について、田園都市論を現在の都市農村計画の視点から調査・検討し、都市域と農村域が混在する首都圏郊外地を、現在の状況や需要をふまえて繋ぎ合わせる理念/手法について整理した。加えて都市域と農村域の再編集するための評価手法を開発した。 (2) について、①計画単位として、首都圏郊外における住宅地立地や周辺環境といった需要を、WEBアンケート調査より把握した。また、人口分布・流動データの分析から、移動の圏域の範囲を把握した。 ②計画主題および③計画運用としては、首都圏郊外には、自治体境界とは異なる民間企業の活動エリア(商圏)が複層的に展開していることが把握できた。そこで、住宅供給やメンテナンスを行うP社を事例として調査をした結果、住宅売買やメンテナンスを十分に行える範囲でのエリア形成の実態が把握できた。また、首都圏郊外地との比較として、地方都市における民間企業と行政の支援のあり方を、宿場町観光や薬草の生産流通といった地域的特色をふまえた産業化に取り組む地域で、主体間の関係性や計画の進め方について把握した。 これら成果からは、首都圏郊外住民の移動や住宅地需要の傾向を基盤とし、従来計画を担っていた行政だけではなく、民間企業の活動も取り入れ、自治体の枠を超えながら居住者の生活を基盤とした計画単位設定や計画の運用が理論的な枠組みとして設定された。
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