研究課題/領域番号 |
21K18773
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永井 大樹 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70360724)
|
研究分担者 |
藤田 昂志 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (80774471)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
キーワード | 低レイノルズ数 / 柔軟膜 / 非定常 |
研究実績の概要 |
本提案では,世界初の超小型の飛行機による火星飛行探査を目指し,生物を模倣したフレキシブルかつ折り畳み可能な展開式火星飛行機の研究・開発を行うことを目的とする. この火星飛行機の開発には既存の航空機開発技術の先にあるものではなく,全く別次元の革新的な翼の開発が求められる.火星の大気密度は地球と比較して1/100程度であるため,流体力学的な観点からの流れ場は,低レイノルズ数流れとなる.この低レイノルズ数環境下での飛行は,流れ場の突然の変化(層流剥離泡,失速)により揚抗比(飛行性能)が急激に悪化することがよく知られており,飛行機の設計を困難にしている.これに対して,昆虫や鳥などは,同等のレイノルズ数環境下で容易に飛行しており,その飛行性能も十分高い.また通常は翼を収納することでコンパクトになっており,これらの条件は火星で飛行させる超小型飛行機の要求(大面積,超軽量および折り畳み翼)と重なる.本提案では,この生物を模倣した翼の研究開発を行うことを目的とし,さらに翼面上の流れ場を制御することにより,より高次元の性能を有する飛行機(羽ばたき翼ではなく,固定翼の飛行機)の開発を目指している. 今年度は,上記の目的のために2つのことを実施した.1つは柔軟膜を用いた翼を作製し,風速(動圧)による膜の変形が空力特性に及ぼす影響を非定常流れ場を可視化することで調査した.その結果,膜の変形により,はく離が抑えられること,さらに膜が振動ことではく離が抑えられることが分かった.もう一つは誘電エラストマーによる柔軟膜のアクティブ制御である.こちらは,実験装置の立ち上げを行い,柔軟膜翼の変形量をデジタル画像相関法を用いて計測する手法の確立を行った.今後はこの計測技術を用いて非定常流れ場と非定常3次元変形量計測の両面から柔軟膜制御に最適な条件を見出すこととする.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
火星飛行機が飛行する低レイノルズ数において柔軟膜翼が有効性な性能を有することを確認できた.また,その理由についても流れ場を計測することで概ね明らかとすることが出来た.ただし,柔軟膜翼のアクティブ制御については,計測技術の確立をすることは出来たが,誘電エラストマー自体の取扱いが難しく,当初の予定以上には進んでいない.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は風洞試験に先立って,誘電エラストマーを用いた柔軟膜翼単体の試験にフォーカスし,その有効性を示すことに注力する.特に材質や膜厚,電圧などの多様なパラメータによる変形量を正しく見積もり,データベース化することで,火星飛行機に適した柔軟膜翼の条件が見出せるといえる. そのためには,今年度行ったデジタル画像相関法による変形量の計測技術に注力し,定常状態における変形量だけでなく,非定常に振動している際の変形量も高精度に推定する技術にしていく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,予定していた国内および国際会議がすべてオンラインであったために旅費を使用する必要性がなくなったために次年度使用額が生じた. 次年度については,今年度の成果を積極的に発表することとその成果を学術論文に投稿し,オープンアクセスとすることで助成金を利用する予定である.
|