この提案は、世界初の超小型飛行機による火星探査を目指し、生物を模倣したフレキシブルかつ折り畳み可能な火星飛行機を研究・開発することを目的としている。この火星飛行機の開発には、従来の航空機開発技術にとどまらず、全く新しい革新的な翼の開発が必要である。火星の大気密度は地球と比較して1/100程度であるため、低レイノルズ数流れという流体力学的な観点からの流れ場が生じる。この低レイノルズ数環境下での飛行は、流れ場の突然の変化(層流剥離泡、失速)により、揚抗比(飛行性能)が急激に低下することがよく知られており、飛行機の設計を困難にしている。それに対して、昆虫や鳥などは同等のレイノルズ数環境下で容易に飛行することができ、飛行性能も十分高いことが分かっている。また、通常は翼を収納することでコンパクトになっており、これらの条件は火星で飛行させる超小型飛行機の要件(大面積、超軽量、折り畳み翼)と一致する。本提案では、生物を模倣した翼の研究開発を行い、翼面上の流れ場を制御することにより、より高次元の性能を有する固定翼の飛行機の開発を目指している。 今年度は、上記の目的のために2つのことを実施した。1つは柔軟膜を用いた翼を作製し、風速(動圧)による膜の変形が空力特性に及ぼす影響を非定常流れ場を可視化することで調査した。特に翼面上の複数枚の流れ場を取得し、それらを再結合することで非定常流れ場と膜振動の関係を明らかにした。もう一つは誘電エラストマーによる柔軟膜のアクティブ制御で、予ひずみが誘電エラストマー翼に与える影響を調査した.特に電圧を変えることで予ひずみを変化させて,その際の膜の変形量をデジタル画像相関法を用いて計測し,空力特性との関係性を調査した.
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