研究実績の概要 |
月,火星における火災安全性評価を行うため,固体プラスチック材料の火炎燃え広がりの限界酸素濃度を実験的に調べた.同時に.スケールアナリシスに基づくエネルギーバランスを考慮したモデルを構築し,限界酸素濃度を理論的に調べた.モデルパラメータに対し,実験データに適合するようにマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法により予測分布を求めた.特に,浮力によって励起される速度を重力の関数としてモデリングを行った.遠心装置に設置した燃焼器を使用し,PMMAおよびLDPEロッドを燃料とし,1G,2G,3G,4Gの重力条件で実験を行った. 結果,消炎限界付近においては,遠心機を用いることによって燃焼器内に観察されるコリオリ力に起因した流れの影響は概ね無視できることが示された.重力レベルが大きくなるにつれて同じ対向流速の時の限界酸素濃度は増加する.また,1G以上の重力場においては,対向流速速度が小さくなるにつれて,一定の限界酸素濃度に収束していく. MCMC法により限界酸素濃度モデルのパラメータを求めた.最初に既存のPMMA平面シートのデータに対してモデルの妥当性検証を行った.幾つかのパラメータ間において相関があることが示され,熱重量解析において得られる熱分解温度に対して係数を求める可能性が示された.また,通常重力環境下において,浮力に起因する流速は33cm/s程度であり,文献値等と良い一致を示す. 測定データのない,低流速領域においては確信区間が大きくなる.これらのパラメータ分布を用いて,微小重力環境(μg),月(1.62m/s2), 火星(3.72m/s2)の重力環境における限界酸素濃度の予測を行った.結果,確信区間の幅があるものの,月の重力環境において対向流速度に対する限界酸素濃度の極値が最小となった.月程度の重力がある場合に最も固体プラスチックの火災の安全性が低い可能性を示した.
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